経穴精査 総論/索引

挿絵 扉絵

─このデータベースについて─

2005年、賀偉氏(千歳烏山・精誠堂鍼灸治療院院長)主催の勉強会にて「個々の経穴を様々な文献から再度精査して、臨床に役立てよう」という提案がなされた。その後2年間、参加者各々が資料を発表する形で、手の太陰肺経から任督脈まで、古今多くの書物、文献から情報収集が続けられ、私は過去に同様の試みを個人的にまとめていたこともあり、一同が収集した資料を自らのノートに組み込む形で編纂し、2007年、勉強会成果物として製本し、参加者一同に配布することになった。

これが本データベースの基となる『経穴精査』である。

その後も私はこの作業を重ね続け、新たに入手した古書漢籍、医学書の知見をさらに追加し、2018年から年に一度渡米しての解剖実習による解剖学の実際、また日々の臨床におけるひらめきや私見を併せて増補推敲を重ねてきた。

この内容を軸に、経絡経穴に対する私の理論は書籍、『経絡と解剖学(2023年03月初版、中外医学社)』という形で世に出ることになり、私が長年続けてきた作業にも一応の括りはできたように思う。

しかし、この書籍で紹介できたツボは361穴ある経穴中ごくわずかであり、今後も臨床を続け、ヒトの心身に向き合う中で、難問や新たなヒラメキは出てくるはずだ。

このデータベースを増補する作業は今後も折を見て少しづつでも重ねていこうと思う。

この場は公益に資する意味で公開しているが、その内容はあくまで「私個人のデータベース」である。読まれる方は、このことをご了解の上でご覧いただきたい。

はりきゅう治療院 伍行庵 吉田 啓

《当院蔵書/参考文献》

「痛みの症状別針灸治療(賀普仁著/静風社)」「動きの解剖学(ブランディーヌ・カレジェルマン著/科学新聞社出版局)」「解剖学(医歯薬出版)」「エレンベルガーの動物解剖学(Ellenberger, Wilhelm/ボーンデジタル)」「解剖学カラーアトラス(医学書院)」「解剖学講義(南山堂)」「解剖実習の手びき(南山堂)」「カパンディ関節の生理学(医歯薬出版)」「からだの設計にミスはない(橋本敬三著/たにぐち書店)」「漢方用語大辞典(燎原)」「奇経八脈考(東洋学術出版社)」「ギルバート発生生物学(Scott F.Gilbert著/メディカル・サイエンス・インタ-ナショナル)「景岳全書(上海科学技術出版社)」「経穴探源(学苑出版社)」「経絡相関論(谷口書店)」「経絡経穴概論(医道の日本社)」「黄帝内経(花城出版社)」「黄帝八十一難経(学苑出版社)」「悟真篇(三民書局)」「骨折の機能解剖学的運動療法 総論・上肢(中外医学社)」「写真でわかるファンクショナルトレーニング(Micheal Boyle著/大修館書店)「図説ヨーガ大全(伊藤武/佼成出版社)」「初歩のチベット医学(ドゥルカナ・カンガァール著/東方出版)」「鍼灸甲乙経(学苑出版)」「鍼灸師・柔道整復師のための医学英語(医道の日本社)」「鍼灸大成(人民衛生出版社)」「鍼灸治療基礎学(医道の日本社)」「鍼灸要訣与按摩十法(中医古典出版社)」「人体の張力ネットワーク 膜・筋膜 最新知見と治療アプローチ(ELSEVIER社/医歯薬出版株式会社)」「人体六〇〇万年史(Daniel E. Lieberman著/早川書房)」「素問ハンドブック(医道の日本社)」「中国医学はいかにつくられたか(山田慶兒著/岩波新書)」「中国耳穴刺血療法(中医古籍出版社)」「腸と脳(Emeran Mayer著/紀伊国屋書店)」「脳の中の身体地図(Sandra Blakeslee, Matthew Blakeslee著/インターシフト)」「脳百話(市村出版)」「Nogier博士の耳介治療ハンドブック(シービーアール)」「抜缶療法の臨床応用(西田皓一著/ヒューマンワールド)」「早わかり経外穴110選(源草社)」「ハリの威力(賀偉著/ジョルダンブックス)」「皮膚は考える(傳田光洋著/岩波書店)」「ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか(NHKスペシャル取材班/角川文庫)」「閃く経絡(Daniel Keown著/医道の日本社)」「蛇(吉野裕子著/講談社学術文庫)」「まんが経穴入門(医道の日本社)」「慢性疼痛診療ガイドライン(真興交易医書出版部)」「脈診 基礎知識と実践ガイド(何金森, 山田勝則著/東洋学術出版社)」「やさしい中医学入門(関口善太著/東洋学術出版社)」「臨床経穴学(東洋学術出版社)」「臨床のための解剖学 Clinically Oriented Anatomy, Seventh Edition(Keith L.Moore・Arthur F.Dalley・Anne M.R.Agur・監訳:佐藤達夫・坂井建雄/メディカル・サイエンス・インターナショナル)「美容と健康の鍼灸(張仁編著・浅野周訳/三和書籍)」「霊枢ハンドブック(医道の日本社)」「わかる・使える関節マニュピレーション(医道の日本社)」「和漢三才図会(東洋文庫)」「Anatomy Trains(Thomas W.Myers)」「Evolution 骨から見る生物の進化(Jean. Baptiste de Panafieu, Patrick Gries著/河出書房新社)」「Fibromyalgia&Other Central Pain Syndromes(Daniel J. Wallance, Daniel J. Clauw)」「NHKスペシャル「人体」神秘の巨大ネットワーク(東京書籍)」「WHO/WPRO標準経穴部位(医道の日本社)」他、文献多数より。

※本データベースのイラストは、すべて私自身が作成したオリジナルです。無断転載はお断りしておりますので、なんらかの形でこの中の資料を使用した場合は必ずご連絡ください。



【経絡 Meridians and Collaterals】

気、血、津液の通路。臓腑と全身を結び、生体の機能を調節・統合する。

《経絡》とは《経脈》と《絡脈》の総称である。

経脈とはメインルートとなる太い流れで、気血の源である臓腑と直接つながり、四肢末端へと伸びていく。対して絡脈とは、経脈の途中から分岐する支流を指す。絡脈は経脈と経脈をつなぐバイパスの役割をもち、これにより一部の流れが阻滞しても、全体としては気血の供給が保たれるシステムになっている。

絶え間なく変化する内外の環境に対応するためのネットワークが経絡という訳だ。

十二の臓腑と直接つながる経脈は《正経十二経》と呼ばれ、六臓(陰)につながるものを《陰経》、六腑(陽)つながるものを《陽経》と云う。

それぞれ6本ある陰経、陽経には、流れる場を示す《手》《足》、そして“陰陽の濃度”を示す言葉が冠に付く。陰経には《太陰》、《少陰》、《厥陰》の3種、それぞれに《手》《足》の2ルートがあり、3×2で6本の経脈を区別する。陽経も同様に、《太陽》、《少陽》、《陽明》の3種×《手》《足》の2ルートの計6本、陰陽あわせて12本の経脈が命名される訳だ。この成り立ちから経脈の名称は、《手の+太陰+肺経》のように、流れる場所+陰陽+臓腑として表される。

またこれら十二経は1本1本が独立して終わっている訳でなく、《手の太陰肺経》⇒《手の陽明大腸経》⇒《足の陽明胃経》⇒《足の太陰脾経》…と、それぞれの経脈の終点と次の経脈の始点がつながり、全体としては全身を巡る大きな輪を形成する。《陰経》は下に沈みやすい《陰気》を上へと引き上げ、《陽経》は上に昇りやすい《陽気》を下へと押し下げ、陰陽の経脈は手指、足趾でつながり、陰経同士は腹腔内(臓腑)で、陽経同士は眼(脳)でつながる。これらの「つながる」場所は複数の経脈の『交会(こうえ)点』として、臨床では重要な施術ポイントとなる。

挿絵 経絡の法則性01

さらにバイパスである絡脈が経脈の流れから分岐し、並走または表裏にある経脈に連絡することで、この“輪”のつながりをより強固なものにしている。

このように《臓腑》から生じた《気血》は《経絡》を経由して上下、前後、左右、内外と、全身をくまなく循環し、すべての生命活動を支えているのだ。

この輪の一部で、なんらかの原因によって交通の不良が生じることが「病」であり、滞った部位に生じる反応がいわゆる「ツボ」=全身に361穴あるとされる《経穴》だ。気体でも液体でも、流体が滞りやすい場というのは決まりがある。流れが急に狭まったり、急に方向を変えたり、分岐したり合流したり、硬さや高低差があったり…経穴とは総じて人体のそういう場に在り、その滞り具合から病を判断し、その目詰まりを解消することで病を治療する。鍼灸治療において経穴は、病の位置や性質を診る診断点であり、病にアプローチする治療点なのだ。

・生理面:気血の運行・陰陽調節・外邪侵入に対する防衛。

・病理面:病邪の伝播・反映。

・治療面:鍼灸刺激の伝導・臓腑の虚実調節。

《正経十二経》


《絡脈(絡穴) Collaterals(Collateral points)》

経脈からの分枝である《絡脈》には、いくつかの種類がある。特に大きな15本を《十五絡》、小さい絡脈を《孫絡》、さらに細かく体表に分布するものを《浮絡》と呼ぶ。

※十五絡は、虚里(心臓/胃之大絡)を加え十六とする事もある。

※経脈の絡脈を『陽絡』、臓腑の絡を『陰絡-脾の大絡(大包)・虚里(心臓・胃之大絡)・胞絡など』と呼ぶことも。

絡脈は浅層(皮下静脈や十二皮部)との関係が深い。

発生的には皮静脈の色による診断点(「魚際」参照)として生じたが、後に治療点として発展する。「血気痰飲、積聚し有形の物は経より絡に滞ること常のごとし」と云われるが、皮静脈には「有形の邪」が滞りやすいと考えられたようだ。

そのため古来の治療法に基づけば、絡穴は瀉血用のポイントと考えることができる。

挿絵 十五絡穴

「列缺」 「偏歴」 「豊隆」 「公孫」 「通里」 「支正」 「飛揚」 「大鐘」 「内関」 「外関」 「光明」 「蠡溝」 「鳩尾」 「長強」 「大包」


【私見】瀉血については、特に伝統医学界では、現在でもその有効性を掲げる論も多い。しかし現代医学の知見から観れば、瀉血による治療効果は特殊な病態を除き、ほぼないとされている。本来の瀉血の目的が「清熱」─ 心身から異常な熱(発熱などの実際の熱だけでなく、双極性障害などアクティブな精神異常や、PMS時のイライラなども含む)を抜くことだとすれば、容易に氷などが手に入らなかった古代では有用だったとしても・・・アイシングが身近なものである現代、清熱としての瀉血の意義はないと考える。瀉血の清熱以外の効果として考えられるのは、反射的な血管運動による何某かの効果、強刺激による意識覚醒などがあるが(血圧に対する効果をあげる方もいるが、血圧に影響を及ぼすような瀉血は害でしかない)、いずれも「瀉血でなければならない」治療法とは考えづらい。

ただ涙、汗、尿、便、射精、大声、場合によっては愚痴や嘔吐など─ 身体から何かを出す行為は快感をもたらし、ストレスを解消する効果がある。自傷行為の依存性などを診ても、血を抜くという行為には「こころの邪熱を抜く」という効果はあるのかもしれない。

しかし、身体にとって負担であることは間違いないので、私はこの療法は用いない。


《経別 Divergent meridians》

《経別》は絡脈と並んで正経十二経から分かれる重要な支脈だ。その役割は臓腑と表裏の経脈を交流させ、すべての脈気を頭部へ上行させることにある。

絡脈との違いは、絡脈が表層にて表裏の経絡をつなぎ、末梢での循環を高めているのに対し、経別は腹腔内で表裏の臓腑と頭部(脳と五感)をつなぐ、中医学的な『脳─腸相関 Brain-gut axis』を形成することだ。これにより、本来頭部に経脈をもたない陰経(気血を生成する五臓)の経気は脳へと昇り、直接的には六腑と結びつかないはずの陽経は、脳を介して胃腸と連絡することになる。

挿絵 肺と大腸、脳のつながり

経別の理論は《頭街(ずがい)-霊枢衛気第五十二-》、《髄海(ずいかい)-霊枢海論第三十三-》とも関係が深く、頭皮鍼法(頭皮のツボで全身を治療する考え方)などの理論根拠ともなる。

挿絵 経別の合

第一合「天柱風池風府「飛揚」

第二合「瞳子髎絲竹空上関「急脈」

第三合「水溝承漿地倉下関「気衝」

第四合「晴明攅竹・印堂「極泉」

第五合「翳風完骨」「天池」

第六合「天容・天牖・人迎・扶突・天窗「缺盆」


【私見】中医学における臓腑のつながりには『三陰三陽(例:肺と脾)』、『子午の対角(例:肺と膀胱)』、『臓腑の表裏(例:肺と大腸)』の3つがある。

この中でも『臓腑の表裏』は生理上最も重要なつながりであり、このつながりを密にするための《絡脈(穴)》、《指趾の末端》、および《経別(特に頭部の合)》の3者は治療において、非常に重要なポイントとなる。これは単に哲学的な問題だけでなく、配穴の合理性(例えば八脈交会穴に絡穴が多い理由)や現代学的視点からも根拠を見いだせるはずだ。

その辺りに関して、各穴の配穴欄にて詳しく述べる。


《経筋 Mascle meridians》

経絡は、臓腑の気を身体のすみずみまで送り届けるための経路だ。その流れの道すがら、周辺の筋組織にもエネルギーを運び、その活動を支えている。一つの経絡に滋養される筋群を、その経絡の《経筋》と呼び、正経十二経にそれぞれ12の経筋が区分されている。

経筋は経絡によって滋養されるものの、臓腑とは直接の関係がない。そのためその名称は《手の+太陰経筋》というように、分布する場所+滋養する経絡の陰陽で表される。ここでも陰陽名が残るのは、経筋もまた、多層構造体であるからだ。

また経筋は経絡とは法則が異なり、すべての経筋は四肢の末端から始まり、各々の筋が関節部に「結び」ながら、《陽経筋》は顎関節、《足の三陰経筋》は陰部と脊柱(体幹)、《手の三陰経筋》は胸郭内部(横隔膜)に結集し、人体各部の運動の連携や調整、姿勢の保持を行う。

挿絵 経筋の法則性

現代の知見では、筋肉は運動器というだけでなく、体液循環の動力、代謝と体熱の産生、さらには免疫機能にも関与していると考えられている。これを中医学的に捉えれば、経筋は『気機(気の流れの法則性)』を整え、温煦作用や防衛作用の盛衰にも影響を与えるということだ。

さらには近年、医学界では筋肉を包む膜─ Fascia(ファシア/膜)に注目が集まっている。Fasciaとは筋膜のみならず、腱、関節包、靭帯、さらには骨膜、硬膜、神経周膜、心膜や胸膜など…人体のあらゆるものを包み、分け、連続する結合組織系の軟部組織成分の総称だが、この膜は単なる包みではなく、腱以上に筋力を関節に伝え、全身の連動を生み出し、眼の網膜以上に感覚に富んだセンサーであることが明らかになってきた。鍼灸をはじめあらゆる徒手療法は、Fasciaにアプローチしているのだ。

伝統的に経筋は、経絡に比べて応用範囲の狭い運動器系の症状にのみ用いられるような概念だった。しかし筋肉という“臓器”の重要性、そしてFasciaという“全身的な張力ネットワーク”が多方面からクローズアップされる今、中医学が想定した連続する筋肉の帯─ 経筋の再認識はとても重要だと私は思う。そこで此処では、古典の記述から推測される筋肉をつなぎあわせ、解剖学に則した形で十二経筋図を作成してみた。自分で描いておいてなんだが、完成した経筋図を改めて見たとき…12の経筋には一種の“型”のような、それぞれ12の原始的な動作を表すようにも思えた。

これについては、それぞれの章で説明する。



【奇経八脈 Extra meridians】

正経間の関連強化する。


《八宗穴 Eight master points》

「列缺」 「照海」 「後渓」 「申脈」 「内関」 「公孫」 「外関」 「足臨泣」



【要穴 Specific points】

経穴の中でも特に重要視される穴。

古典の定義に沿えば《経穴》とは、「経絡上、”分肉之間”に存在する経気の聚まる処」となる。経穴は経絡内の気血の状態を把握する診断点であり反応点、加えて気血の異常を矯正する治療点でもある。その中でも特に重要な作用を持つとされる経穴を《要穴》と云う。


《五兪(行)穴 Five tarnsport(element) points》

肘と膝より先の末端部位には、『五兪穴(ごゆけつ)』と呼ばれる要穴が並ぶ。これは正経十二経のいずれにも存在し、経脈を問わず兪穴それぞれに特殊な効能があるとされている。

挿絵 五兪穴の効能

五兪穴に並べられた症状は、現代医学からみれば、どれも「自律神経の乱れ」によるものだ。こういった状況は、気圧差、温度差、湿度差など、外部環境の急激な変化に対応しようとして引き起こされる。中医学では、このような急激な天候変化を『六淫(ろくいん)』と呼び、主な病因の一つとしている。特に近年の気候変動はすさまじく、自律神経系への負担は年々否応なしに増してしまっている。こんな時代にあって、五兪穴の応用はますます大切になるはずだ。

挿絵 六淫

井穴 Well points(陽経金穴/陰経木穴):脈気の出る処「心下満を治す」

「少商」 「商陽」 「厲兌」 「隠白」 「少衝」 「少澤」 「至陰」 「湧泉」 「中衝」 「関衝」 「足竅陰」 「大敦」

榮穴 Spring points(陽経水穴/陰経火穴):脈気の溜まる処「身熱を治す」

「魚際」 「二間」 「内庭」 「大都」 「少府」 「前谷」 「足通谷」 「然谷」 「労宮」 「液門」 「侠渓」 「行間」

兪穴 Stream points(陽経木穴/陰経土穴):脈気の注ぐ処「体重節痛を治す」

「太淵」 「三間」 「陥谷」 「太白」 「神門」 「後渓」 「束骨」 「太渓」 「大陵」 「中渚」 「足臨泣」 「太衝」

経穴 River points(陽経火穴/陰経金穴):脈気の行く処「喘咳寒熱を治す」

「経渠」 「陽渓」 「解渓」 「商丘」 「霊道」 「陽谷」 「崑崙」 「復溜」 「間使」 「支溝」 「陽輔」 「中封」

合穴 Sea points(陽経土穴/陰経水穴):脈気の入る処「逆気而して泄するを治す」

※六腑には合穴の他、下肢に「下合穴」と呼ばれる穴が在る。併せて記載する。

「尺澤」 「曲池」「上巨虚」 「足三里」 「陰陵泉」 「少海」 「小海」「下巨虚」 「委中」 「陰谷」 「曲澤」 「天井」「委陽」 「陽陵泉」 「曲泉」

原穴 Source points:脈気の過る処

経脈上で、最も臓腑の気が表れるツボを『原穴(げんけつ)』と呼ぶ。診断点として用いられることが多い。

陰経では兪穴が原穴を兼ねる。この理由については五臓六腑─ 陰臓が5つ、陽臓が6つあることから、陰経には要穴が5つ、陽経には要穴が6つ定められているとされる。

挿絵 十二原穴

「太淵」 「合谷」 「衝陽」 「太白」 「神門」 「腕骨」 「京骨」 「太渓」 「大陵」 「陽池」 「丘墟」 「太衝」


背兪穴 Associated points:臓腑の気の出入する処

経穴イラスト 五臓兪

「肺兪」 「厥陰兪」 「心兪」 「肝兪」 「胆兪」 「脾兪」 「胃兪」 「三焦兪」 「腎兪」 「大腸兪」 「小腸兪」 「膀胱兪」


募穴 Gathering points:臓腑の気の募る処

『募穴』は12の臓腑それぞれに一つ(左右で2つの場合も)あり、その位置は内臓の解剖学的位置をほぼ投影している。そのため募穴の痛みや硬結、血管の浮き具合や動きなどは、その臓腑の状態を知る手がかりとなり、診断点として重要視されてきた。その硬さや痛みなどに加え、呼吸や打診などによる雑音なども、大きな手がかりとなる。

また募穴には、総じて臓腑の代謝を高める効能があるとされ、その臓腑になんらかの悪性要因が加わった状態─『実証(じつしょう)』の治療に多用される。例えば細菌やウイルス感染、内容物の停滞、腫瘍などは実証の典型だ。こういった病態は、外界に開いている六腑(消化管)に生じること多い。

挿絵 募穴

「中府」 「天枢」 「中脘」 「章門」 「巨闕」 「関元」 「中極」 「京門」 「膻中」 「石門」 「日月」 「期門」


郄穴 Accumulating points:脈気の集る処

挿絵 十六郄穴

「孔最」 「温溜」 「梁丘」 「地機」 「陰郄」 「養老」 「金門」 「水泉」 「郄門」 「会宗」 「外丘」 「中都」 「陽交」 「跗陽」 「筑賓」 「交信」


八会穴:

挿絵 八会穴

「臓会:章門」 「腑会:中脘」 「気会:膻中」 「血会:膈兪」 「骨会:大杼」 「髄会:懸鐘」 「脈会:太淵」 「筋会:陽陵泉」


《奇穴 Extra points》

経絡流注上に存在しない穴位。名称・部位の特定はある。

「四神聡」 「当陽」 「印堂(明堂・洞房・上丹田)」 「魚腰」 「太陽」 「耳尖」 「球後」 「上迎香」 「内迎香」 「聚泉」 「金津・玉液」「海泉」 「翳明」 「頸百労」 「山根」 「裏頄」 「安眠」

「鳳眼」 「龍眼」

「髖骨・鶴頂」 「百窩虫」 「膝眼」 「胆嚢」 「闌尾」 「内踝尖」 「外踝尖」 「八風」 「独陰」 「気端」

「蹻五」

「腰宜」 「腰眼」


《阿是穴(天応穴) Pain points》

経絡流注上に存在せず、名称・部位の特定もない穴位。経筋病においては重要。



【私見】 ─鍼灸は何にアプローチしているのか?─

中医学の基礎となる《陰陽》、《気》、《血》、《津液》、《臓腑》、《経絡》、そして《経筋》。此処で少し視点を変えて、現代医学的にこれらを考えてみよう。

陰陽とは恒常性、気とは代謝のためのエネルギー、血と津液は液体成分、臓腑は内臓・・・異なる点はあるものの、概要としてはこの理解で正しい。では《経絡》とは何か?鍼灸では経絡上の滞り─ 経穴(ツボ)を治療点として用いるが、これは具体的にはなんだろう?この問いはおそらくすべての鍼灸師の根本的な疑問であり、今なお答えの出ない難問でもある・・・が、ツボが体表にあるならば、それは皮下構造の中にあるはずだ。

挿絵 皮下構造

ここからは私見になるが、私の場合、皮下構造の層を目的に応じて使い分けている。

・極めて浅い皮膚層(指圧やマッサージも含む)では、脳(の島皮質)への投影を目的として。

・脂肪組織層にある皮下静脈では、血管壁を取り巻く交感神経系を目標として。

・疎性結合組織や筋間では、筋膜間の滑走性を高めるために。

・神経筋接合部へは、神経と筋の関係を正しく再構成するために。

・骨膜、靭帯層では関節構造の可動性を高めるために─ といった具合だ。

挿絵 鍼の深さとその目的

鍼灸が刺激療法である以上、神経を介して効果が生じるのは間違いない。そして上に挙げた層にはいずれにも、温冷覚、痛覚、触圧覚、圧迫、伸張、屈伸などさまざまな種類の感覚受容器が豊富に存在する(一説には、浅筋膜と深筋膜の境界には非常に高密度な固有受容性神経終末が存在するともいわれる)。鍼術においては古来、刺鍼時に患者が感じる“重さ”、“だるさ”、“しびれ”、“張る”といった単純な痛みではない感覚─ 《得気(とっき)》と呼ばれるものの有無が、その治療の良し悪しを決めるとされてきた。つまり、皮下の各層に「選択的に」刺激を送り込むことこそ、鍼治療の要という訳だ。

経絡やツボという概念は中医学の哲学面が強く反映されたものだ。そのためそのメカニズムや効能は、現代の解剖学や生理学では説明できない部分も多い(そして、そういう解釈を好まない鍼灸師もまた多い)。

このデータベース内では各経絡、各経穴について出来る限り、現代医学的な視点から迫りたいと思う。この挑戦が意欲的な鍼灸師、あるいはさまざまな立場で人体に携わる方々のほんの少しでもお役に立てたら幸いだ。



編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
℡ 048-851-9675

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