BL14)厥陰兪(jue2yin1shu4)(けついんゆ)・闕兪・厥兪
【取穴】
上背部、第4胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方一寸五分。
・筋肉:僧帽筋/菱形筋/脊柱起立筋
・運動神経:《Ⅺ》副神経、頚神経叢筋枝/肩甲背神経/脊髄(胸)神経後枝
・知覚神経:脊髄(胸)神経後枝
・血管:頚横動脈の枝、肋間動脈
※肩胛間部圧診点(気管支リンパ節の診断点)に近い。
【名の由来】
「厥陰=消尽・消失」。本穴が本来兪穴を持たない心包絡の兪穴を代替する事から。
【要穴】
『心包兪穴』
【作用】
〔補〕心寧安神・通経活絡
【弁証主治】
◆足太陽経病
風邪・発熱による疼痛など
◆心包虚証/脈病
ストレス/不安障害、パニック障害(頻脈など)・自己免疫疾患・※副腎皮質機能亢進症・各種依存症など
【主症主治】
喘息・肋間神経痛・肋膜炎
【弁証配穴】
『兪募配穴(心包・脈):膻中+厥陰兪』…心包病
【私見】
・本穴の外方一寸五分には『膏肓』がある。霊枢九針十二原第一では「膏の原は鳩尾より出る」とされる。
・本穴は背部兪穴の一つだが、他の背兪穴の様に交感神経系へのアプローチよりも、胸腺との関わりを強く考えている。
・胸腺は成長期の免疫に関わる臓器だが、※副腎皮質ホルモンの亢進が起こると、胸腺の萎縮を起こすとの報告がある。胸腺(内胚葉由来)・副腎皮質(中胚葉由来)・副腎髄質(外肺葉由来)の三者は、位置・組成ともに脂肪との関係も深く、『膏肓』との関連にも辻褄が合う。この三者の連関が、心包と三焦の一つの形ではと考える。
・個人的には、心包≒胸腺、三焦≒副腎(特に皮質)に代表される脂質ではないかと考えている。 副腎髄質は実質、交感神経節後線維であり、※副腎皮質ホルモンの亢進は、胸腺を萎縮させ、免疫を抑制する。この三者の働きは、当院が考える「ホメオスタシスの五角形」の要になるのではと考える。
・心包は「喜楽出」とされる。喜楽=快楽と考えると、欲求の暴走である各種依存症や、ストレスなどから生じる疾患には有効と思われる。
・武術的な「致命三十六穴」の一つ。肺の損傷。
・第4胸椎は、脊椎の弱点でもある。第4、第5胸椎は頚長筋の付着が最も少なく、収縮する際に僧帽筋のさまざまな部分が第4胸椎を引っ張る。
※副腎皮質ホルモン…ステロイドホルモン。いすれも生体のエネルギー利用を高める方向に左右する。ストレスに対して視床下部(CRH)⇒下垂体前葉(ACTH)⇒副腎皮質と、血中ホルモンの作用により促進され、血中のステロイド濃度が上位中枢に抑制的に働く。
・糖質コルチコイド…血糖値の上昇・タンパク質分解促進・抗炎症作用・免疫抑制作用・胃酸分泌促進など。クッシング症候群(過剰分泌)では、満月様顔貌・蛋白質質減少・高血糖・高血圧・精神異常などを生じる。
・電解質コルチコイド…血液量の減少やNa⁺濃度の低下に反応してNa⁺再吸収・水分再吸収・K⁺排出を促す。コン症候群(過剰分泌)では多尿・多飲・高血圧・虚弱などを生じる。
・副腎アンドロゲン…通常、活性は弱い。身体を男性化する。副腎性器症候群(過剰分泌)では、女性では体型の男性化・思春期の男性においては、精巣が未熟であるにも関わらず、第2次性徴のみが早熟する。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
℡ 048-851-9675
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