KI3)太渓(tai4xi1)(たいけい)・呂細(lv3xi4)(ろさい)
【取穴】
足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部。
【名の由来】
「渓=陥凹」。本穴が腎の原穴であり、少陰の脈気が大きな流れとなる場所である事から。
【要穴】
『腎原穴』
『足少陰経兪土穴(水経土穴/土克水)』
【作用】
〔補〕『回陽九針穴/補益腎気・健脳益髄』
〔瀉〕『水兪五十七処“太衝”/通利三焦』
【弁証主治】
◆腎/心/大腸病
更年期障害(睡眠障害・不安障害・めまい・動悸、脈浮洪、臍上の強い拍動〔灸7~50壮〕・掌の火照り・11:00~13:00あるいは23:00~01:00の異常など)
加齢性の症状(サルコペニア・健忘・被害妄想・視力低下・難聴、耳鳴・口の渇き・歯痛、歯槽膿漏・排便異常など)
◆足少陰経(筋)病/衝脈病「体重節痛を治す」「逆気して裏急す」
身体が膨張したように感じる(泌尿器、婦人科疾患・皮膚静脈炎)〔瀉〕
身体が縮んだように感じる(認知症・※脱証、錐体外路系障害・貧血・喘息)〔補〕 など
【弁証配穴】
『兪原配穴(腎):腎兪+太渓』…腎気虚証〔補法〕
『原絡配穴(腎⇒膀胱):太渓+飛揚』…腎所生病
『二原配穴(心/腎):神門+太渓』…心腎不交証(更年期障害、不眠など)
『二原配穴(腎/大腸):太渓+合谷』…腎虚証/加齢性の症状(歯・耳・髪の問題)
『原募配穴(足少陰経):太渓+京門』…足少陰経是動病
【主症配穴】
『回陽九針穴法:瘂門⇒労宮⇒三陰交⇒湧泉⇒太渓⇒中脘⇒環跳⇒足三里⇒合谷/蘇生法?』
+湧泉…耳痛
+郄門〔瀉〕…喀血〔太渓は補〕
+紫宮〔瀉〕…胸苦しく、咳き込む〔太渓は補〕
+中脘…※霍乱〔先に太渓を取穴し、次に中脘を〕
【症例/個人的見解】
・原穴はその臓腑経絡に加え、子午の表裏にある臓腑経絡も主治する。すなわち腎原穴である太渓は、手陽明大腸経の病(主に所生病)も主治とする。
・個人的には、原穴は『複合的臓腑連関』のつながりに基づいた、三臓腑を統合したような病状に用いるべきかと考える。
・本穴では「腎/心/大腸」をつなぐ病状として、更年期障害(心身のバランスの崩れ)や加齢性の感覚低下(難聴など)には、適応と考える。
・『水兪五十七処』の“太衝”に数えられる。精/血の異常に効果が高い。個人的には衝脈に属すと考える。
・原絡配穴(太渓+飛揚)にて、精神疾患に伴う足裏のほてりが緩解することは多い。
・中国では、『回陽九針穴』を順番に取穴していくと、一時的な蘇生効果があるともいわれる。
・足少陰経筋の病-仲秋痺-は「此筋折紐、紐発数甚者、死不治」とある。個人的には錐体外路系の変性疾患を思わせる。
・武術的な「致残十八穴」の一つ。捻挫、打突により足に力が入らなくなる。
※脱証…珠ような汗がながれ、手足がひどく冷える・眼は閉じ口は開いたまま、手は巻き上がる・尿漏れ・脈微細絶。虚証。描写から考えるに、錐体路、錐体外路変性、進行性球マヒなども含まれるかと。
※霍乱…熱中症に類する。突発性のひどい嘔吐と下痢、胃の気持ち悪さ。寒・熱・乾・湿の区別があり、筋肉の痙攣(特に腹筋・腓腹筋)を生じることもある。コレラや細菌性食中毒も該当。
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※呂細(lv3xi4)(ろさい)・内果尖
※経外奇穴-備急千金要方-奇効良方-
【取穴】
足関節後内側、内果尖。
【名の由来】
「呂=古代音楽の十二律の内、陰律(六呂)」「細=弱い」。本穴を境に、少陰の脈気が大きな流れとなる事から。
【主治】
歯痛〔灸27壮〕・小児の言葉が遅い・扁桃炎・痔瘻・足内側筋の痙攣
【配穴】
+昆侖…慢性の膝痛・踵の痛み〔補法〕
編:はりきゅう治療院 伍行庵
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