LU9)太淵(tai4yuan1)(たいえん)・鬼心(gui3xin1)(きしん)・太泉
【取穴】
手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部。
・筋肉《支配神経》:屈筋支帯 Flexor retinaculum(横手根靭帯 Transverse carpi ligament)/長母指屈筋腱 Flexor policis longus tendon《正中神経由来の前骨間神経(C8,T1) Anterior interosseous nerve》
・知覚神経:橈骨神経浅枝 Superficial branch of Radial nerve
・血管:橈骨動脈 Radial artery
※手関節掌側横紋の橈側、橈骨動脈上。
【名の由来】
「太=大」「淵=深い水溜り」。経渠からの流れが全て本穴に集う事から。
【要穴】
『手太陰経兪土穴(金経土穴/土生金/自経母穴)』
『肺原穴』
『標本:手太陰之本』
『八会穴:脈会』
【作用】
〔補〕補中益肺
〔瀉〕清肺宣肺・疏理肺気・清熱解熱
【弁証主治】
◆肺/太陽病(表証・風邪)「虚すれば其の母を補う」
悪寒戦慄を伴う発熱(脈浮緩・両手を交えてもだえる・排尿痛)・発熱による疼痛(頭痛)・咳嗽、喘息・不眠・顔色が黒い・痔・臍右の強い拍動など
◆肺/脾病
貧血(脈沈遅)・不眠、自律神経失調・不安障害・呼吸器の虚弱・胃腸虚弱、萎縮性胃炎、※積聚・軟便・泌尿器、婦人科疾患・部位のはっきりしない疼痛など
◆手太陰経(筋)病「体重節痛を治す」
呼吸困難・げっぷ・吐血・肩背部痛・上肢痛、ひきつれ・肘痛・腱鞘炎・母指、第2指痛など
【弁証配穴】
『郄会配穴(脈):太淵+郄門・孔最』…脈病
『兪原配穴(肺):肺兪+太淵』…肺虚証〔補法〕
『原絡配穴(肺⇒大腸):太淵+偏歴』…肺病
『原募配穴(手太陰経):太淵+中府』…手太陰経病
『原合配穴(手太陰経):太淵+尺澤』…手太陰経筋病
『二原配穴(肺/脾):太淵+太白』…肺脾気虚〔補法〕
『二原配穴(肺/膀胱):太淵+京骨』…腎不納気証(尿漏れなど)〔補法〕
【主症配穴】
『十三鬼穴:水溝〔左禾髎~右禾髎の透刺?〕⇒少商〔3分刺入〕⇒隠白〔3分刺入〕⇒太淵(大陵)〔5分刺入〕⇒申脈〔火鍼3分〕⇒風府⇒頬車〔温鍼〕⇒承漿〔左頤孔~右頤孔の透刺?〕⇒労宮(間使)⇒上星⇒会陰⇒曲池〔火鍼〕⇒鬼封〔瀉血〕/精神疾患』〔水溝から順に、症状を見ながら一つ一つ穴を加えていく。後渓を加えると尚良し〕
+列缺〔瀉〕…胸痛・痰がからんだ咳・頭痛〔繆刺〕
【私見】
・原穴はその臓腑経絡に加え、子午の対角にある臓腑経絡も主治する。すなわち本穴は、足太陽膀胱経の病(主に所生病)も主治とする。
・個人的には、原穴は『複合的臓腑連関』のつながりに基づいた、三臓腑を統合したような病状に用いるべきかと考える。
・本穴では「肺/膀胱」をつなぐ病状として、表証=風邪など感染性疾患全般、「肺/脾」をつなぐ病状として虚弱体質などには適応と考える。
・肺・衛疾患に著効。
・検証:得気は浅層で「曲澤」、中層で「手三里」、深層で「陽渓」に走る。全体として「合谷」から示指尖端へ走る感覚はある。
・武術的な「致命三十六穴」の一つ。橈骨動脈からの出血。
※積聚…お腹の中にしこりがあり、張れや痛みを伴う病証。一般に、しこりが明らかで、痛みや張りが強く、位置が一定なものを積。 しこりが不明瞭で、一時的に張りがきて痛みが移動するものを聚という。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
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