KI1)湧泉(yong3quan2)(ゆうせん)・地衝・蹶心・地衢
【取穴】
足底、足指屈曲時、足底の最陥凹部。
※足指屈曲時、足底部で第2・3指の間のみずかきと踵を結ぶ線上、みずかきから1/3にある。
【名の由来】
本穴が足少陰経の最初の穴であり、腎の脈気が湧き出る場所である事から。
【要穴】
『足少陰経井木穴(水経木穴/自経子穴/水生木)』
『根結:足少陰之根』
【交会】
・経絡(2):足少陰経-陰蹻脈 ※一説には陰蹻脈の交会とも
【作用】
〔補灸〕『回陽九針穴/蘇生・降火潜陽・導邪(導痰・導熱・引血)下降』
〔瀉〕醒脳開竅・引火下行・平衝降逆・安神鎮静・催産引産
【弁証主治】
◆気滞証「心下満を治す/実すれば其の子を瀉す」
※奔豚、更年期障害など
◆足少陰経(筋)病
てんかん発作・貧血、血液疾患・痴呆・喘息・※昌陽脈腰痛 ・O脚・下半身の冷え、痛み、ひきつれ・老化症状など
◆陰蹻脈病「陽緩み陰急す」
悪風発熱〔瀉血〕・自律神経失調・視力低下、眼裏痛・皮膚の強いしびれやこわばり・部位がはっきりしない疼痛・錐体外路系障害など
【弁証配穴】
+大鐘…足少陰絡脈の実証〔繆刺法…反対側の湧泉を瀉血〕
【主症配穴】
『三才穴:湧泉+百会+水溝/意識障害・昏睡』〔瀉法〕
『回陽九針穴法:瘂門⇒労宮⇒三陰交⇒湧泉⇒太渓⇒中脘⇒環跳⇒足三里⇒合谷/蘇生法?』
+陰交〔速瀉〕…発熱 〔湧泉は久補〕
+行間…糖尿病
+崑崙…慢性の深部の痛み〔瀉法〕
+太渓…耳痛
+労宮…手汗・足汗
+至陽…急性肝炎〔瀉法〕
【症例/個人的見解】
・井穴はその位置的に、いずれも瀉熱作用〔瀉血〕が強いが、本穴は例外的に補陽の役割の方が高い。経絡的に、足少陰経の始穴は至陰であるためか?
・本穴に生附子・生半夏・呉茱萸・大蒜・大葱・白芥子・南星・生香附子などを貼付する療法もある。補陽に効果的。
・中国では『回陽九針穴』を順番に取穴していくと、一時的な蘇生効果があるともいわれる。
・陰蹻脈は「一身左右の陰を主る」ことから、臨床では巨刺・繆刺を多用する。
・「陽緩み陰急す」を姿勢からみると、前傾前屈姿勢となる。この姿勢に加え、「蹻=足を高くあげて歩く・力強く歩く様・敏捷」を病むと考えた時、パーキンソン病をはじめとするような錐体外路系の変性疾患に対して、陰蹻脈は適応かと考える。
・陰蹻脈の病証では、表に異常がなく裏が病み(表面上に異常がないが症状が強いなど)、夜に症状がでる事が多い。
・陰を病むと熱を生ず。
※腎積奔豚…五積之一。脇腹にしこりが出来、このしこりが時々胸を衝き上げるようで苦しい・腹痛・往来寒熱・骨萎・息切れなど。
※昌陽之脈腰痛…腰痛が脇肋までひきつれ、視界がぼやけ、甚だしい時には背中が反り返り、舌が巻き上がって話せない。
※-素問刺腰痛篇第四十一-に記載の『昌陽之脈』を、陰蹻脈とする説もある。「昌陽」は復溜の別名でもあるが(「内筋」は交信の別名)、復溜も陰蹻脈に係わるという事か?
編:はりきゅう治療院 伍行庵
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