手厥陰心包経(Shou-jueyin-xinbao-jing)(Pericardium-meridian)
【経脈流注】-霊枢経脈第十-
「心主手厥陰心包絡の脈、胸中に起り、出て心包絡に属し、膈を下り、三焦を歴絡す」
「その支脈は胸を巡り脇に出て、腋を下ること三寸、上って腋に至り、上腕を手太陰経と手少陰経の間を下り、肘中に入り、前腕の両筋の間(長掌筋の2本の筋)を下り、掌中に入り、巡りて中指の端に出る」
「更にその支脈は、掌中から別れ、第四指の端に出る」
・左右:計十八穴
「天池」 「天泉」 「曲澤『合水』」 「郄門『郄』」※「二白」 「間使『経金』」 「内関『絡』『八宗陰維』」 「大陵『兪土/原』」 「労宮『榮火』」※「四縫」 「中衝『井木』」
『標本』-霊枢衛気第五十二-
(標)腋下の下三寸…「淵腋」?
【概要】
・一陰/合:損なうと神の不寧(精神疾患)・脈病を生じる。
・気血:少気多血-素問血気形志篇第二十四-
・深度:二分以下(留一呼以下)-霊枢経水第十二-
・子午:戌刻(19:00~21:00)
※-素問運気七篇(第六十六~七十四)-に由来する時間と経絡の関係を臨床に応用したもの。此処では現在一般的な各経に対応する十二支(時刻)を表記。
【絡脈流注】-霊枢経脈第十-
「手心主の別絡を『内関』と云い、手首の上二寸、両筋の間を出て、本経を巡りて上行し、心に系し、心系を包み絡す」
【経別(第六合)】-霊枢経別第十一-
『離(別)/入:淵腋(腋窩)』 『出:咽喉・耳後(完骨)』 『合:手少陽経へ』
※一説には、胸中にて上脘と交会するとも。
【経筋(孟冬痺)】-霊枢経筋第十三-
「手心主の筋、中指に起り、手太陰経筋と平行し肘内側に結び、上腕の内側を上り腋下に結び、下りて肋を前後に挟み散ず」
「その分枝は腋に入り、胸中に散じ、上腕に結ぶ」
・結処
『第3指(中衝)』 『肘内側(曲澤)』 『腋下(極泉)』 『胸郭』
《心包》
※心包と三焦と膏肓について
心包の兪穴である『厥陰兪』の外方一寸五分には『膏肓』があり、三焦の兪穴である『三焦兪』の外方一寸五分には『肓門』がある。
「膏」「肓」ともに字義としては「脂肪」を指す。
【私見】
解剖学的見地からみれば
心臓を覆う心膜上には、免疫系の重要な器官である「胸腺」があり、胸腺は成人後、脂肪組織に置き換わる。
胸腺の発育とストレスには密接な関係があり、幼少期に過度とストレスに晒された場合、胸腺(免疫力)の発育が阻害される。
(胸腺の発達度合が、児童虐待の法医学的根拠となる場合もあるとか)
また『三焦兪』は『腎兪』の一椎体上に位置し、この位置関係は「副腎」を思わせる。
副腎皮質もまた、脂肪滴を多く含む上皮細胞組織であり、腹膜後方の脂肪に包まれ、分泌するステロイドホルモンもまた脂質からなる(副腎髄質は、交感神経の神経節が変化したもの)。
脂肪の本来の働きは、「脳」と「生殖」のための安定した栄養供給にある。
(故にヒトは他の霊長類に比べて圧倒的に体脂肪が多く、脂質に対する欲求も強い)
東洋医学においては「脳(髄海)」も「生殖(天癸)」も『腎気』の働きであり、
心包を『心主』、三焦を『原気之別使』とも呼ぶこと、
また心包が「喜(快)楽出」場であることを考えると、
『心包と三焦』と『胸腺と副腎』、それらをつなぐ『膏肓と脂肪』は、『心(脳)と腎(生殖)』の関係性につよくむすびつくもの
と考える。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
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