陰 蹻 脈/絡(YiHV)

陰蹻脈/絡(Yinqiao-mai)(Yin-heel-vessel)

【経脈流注】

-奇経八脈考-

「陰蹻は、足少陰の別脈なり」

「その脈は跟中、足少陰の然谷穴の後(湧泉?)に起り、足少陰と同じく内踝の下、照海穴を巡り、内踝の上二寸を上り、交信を以て郄となす」

「直上して内股を巡り陰部に入り、上りて胸裏を巡り、缺盆に入りて上り、人迎の前に出て咽喉に至り、衝脈と交貫し、頬骨の内側に入り、上行して目内眦に属し、睛明にて手足太陽経、足陽明経、陽蹻(陰蹻)の五脈が会し、さらに上行す」

-霊枢寒熱病第二十一-

「足太陽経に項を通り脳に入る脈あり」

「正に目の本に属し、名を目系と云う」

「頭目の苦痛は此処を治療し、項の中央、左右僧帽筋の間に在り、脳に入りて陰蹻、陽蹻に別れる」

「陰陽は相交わり、陽は陰に入り、陰は陽に出て目の鋭眦で交わり、陽気盛んであれば目が開き、陰気盛んであれば目を瞑る」

 

・左右計十穴

※此処では-奇経八脈考-記載の八穴に、湧泉を加えて十穴とする。

※医書中で、陰蹻脈に確実に含まれるのは、照海と交信の四穴となる。(-鍼灸大成-ではこの四穴のみ)。

しかし睛明は陰蹻脈の交会として様々な古典に記載がある事、また丹経(玄道・仙術の書物)には、「陰蹻脈は湧泉と泥丸(脳あるいは百会)を通す」ような記述がみられる事、加えて然谷・缺盆・人迎の穴名が流注上にみられる事などを考え合わせると、上の図のような走行ではないかと思われる。

 

「湧泉」 「然谷」 「照海『宗穴/八脈交会穴(陰蹻)』」 「交信『陰蹻郄』」 「睛明」

 

・属する可能性のある穴

「復溜」

※-素問刺腰痛篇第四十一-に記載の『昌陽之脈』を、陰蹻脈とする説もある。『昌陽』は復溜の別名でもあるが(「内筋」は交信の別名)、復溜も陰蹻脈に係わるという事か?

「風池」

※陰陽蹻脈はともに跟中に起こり、睛明にて会し、脳の内外を循って風池に結ぶとされる。

「尾閭(長強)」 「丹田(関元)」 「夾脊」 「膻中」 「玉枕(風府/脳戸)」 「印堂」 「泥丸(百会)」

【概要】

・「蹻=足を高くあげて歩く・力強く歩く様・敏捷」。蹻脈が足跟から起き、人の健歩に関わる作用を持つ事から。

『一身左右の陰を主る』

・跟中に起こり、一身両側の陰を主る。

『足少陰之別脈』『陰絡』

・諸陰(五臓・任脈)に絡す。

 

※「蹻」の意味に加え、眼(視神経交叉)との関わりが深い事、-霊枢経筋第十三-に錐体交叉(運動性伝導路)を思わせる記述がある事などを考えると、陰陽蹻脈は中枢神経系(特に中脳・視床・小脳など)との関わりが深いと思われる。

※-難経二十六難-には十二絡脈に脾之大絡・陽絡(陽蹻脈)・陰絡(陰蹻脈)を加え、十五絡としている。これは、奇経の中でも特に蹻脈が、絡脈と同じ性質(本経から分枝し、経穴を持たず、諸経の連携を強化調節し、特異な主治を持つ)を持つ故かと考えられる。

 

【主治】「陽緩み陰急す」

てんかん・自律神経失調(嗜眠/副交感神経優位)・眼裏痛(充血・内眼眦痛)・視力低下・腰痛(昌陽脈の腰痛)・過敏性腸症候群・疝痛、不正出血・下半身の冷えと痛み・下肢内側のこわばり、O脚・皮膚の強いしびれやこわばり

部位がはっきりしない疼痛(むずむず脚症候群など)・錐体外路系障害など

寒熱・悪風発熱

 

※「陽緩み陰急す」

・意味としては「陽側が弛緩し、陰側が拘急す」となる。

・之には下肢の外側が緩み、内側が拘急する状態(内反足・内股の拘急)だけでなく、下肢全体(上半身に対して陰)の拘縮、悪風発熱や皮膚の強いしびれ(線維性筋痛症・多発性硬化症なども含むか?)なども含まれる。

・前傾前屈姿勢も「陽緩陰急」である。加えて「蹻」を病むと考えた時、パーキンソン病をはじめとするような錐体外路系の変性疾患に対して、陰蹻脈は適応かと考える。

・また陰蹻脈の病証では、表に異常がなく裏が病み(表面上に異常がないが症状が強いなど)、夜に症状がでる事が多い。

 

【症例/個人的見解】

・陰蹻脈は奇経八脈中、最も仙術的要素が強い脈の様である。

・-八脈経-によれば、「奇経八脈は、先天大道の根にして一気の祖であり、中でも陰蹻脈こそが先に在り、この脈が僅かにでも動けば、諸脈は皆通ず。次に督・任・衝の三脈、全ての経脈の造化の源である」とある。

・陰蹻脈が「すべての経絡の始原である」と云うならば、この脈?の本質は・・・個人的には「重力」がコレにあたるのではと考える。

「八脉者、冲脉在风府下、督脉在脐后、任脉在脐前、带脉在腰、阴蹻脉在尾闾前、阳蹻脉在尾闾后二节、阴维脉在顶前一寸三分、阳维脉在顶后一寸三分」

「凡人有此八脉、俱属阴神、闭而不开。惟神仙以阳气冲开、故能得道」

「八脉者、先天大道之根、一气之租」

「采之惟在阴蹻为先、此脉才动、诸脉皆通。次督、任、冲三脉、综为经脉造化之源」

「而阴蹻一脉、散在丹经、其名颇多。曰天根、曰死户、曰复命关、曰丰都鬼户、曰死生根。有神主之、名曰桃康。上通泥丸、下透涌泉

「倘能知此、使真气聚散、皆从此开窍、则天门常开、地户永闭。尻脉周流一身、贯通上下、和气自然上朝」

「阳长阴消、水中火发、雪里花开、所谓”天根月窟闲来往、三十六宫都是春”」

「得之者、身体轻健、容衰返壮、昏昏默默、如醉如痴、此其验也」

「要知西南之乡乃坤地、尾闾之前、膀胱之后、小肠之下、灵龟之上、此乃天地逐日所生气根、产铅之地也、医家不知友此」

・陰蹻脈を臨床に用いる際は、巨刺・繆刺が基本。

・陽(維・蹻)を病むと寒を生ず

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