任脈(Ren-mai)(Conception-vessel)
【経脈流注】-奇経八脈考-
「任は陰脈の海」
「其の脈は中極の下、少腹の内に起き、会陰の分かれ目を上って外に出、曲骨を巡り、陰毛際を上り、中極に至り、足厥陰経・足太陰経・足少陰経と併行して腹裏を進み、関元を巡り石門・気海を歴し、陰交にて足少陰経と衝脈に会し、神闕・水分を巡り、下脘で足太陰経と会し、建里を歴し、中脘にて手太陽経・手少陽経・足陽明経と会す」
「上脘・巨闕・鳩尾・中庭・膻中、玉堂・紫宮・華蓋・璇璣と上り、喉に上り天突・廉泉にて陰維脈と会す」
「頤に上り、承漿にて手足陽明経と督脈に会す」
「唇上を環し、齦交に至りて下り、再び分かれ出て顔を巡り、両目の下中央、承泣に至りて終わる」
・計二十四穴
「会陰(禁鍼)」 「曲骨」 「中極『膀胱募』」 「関元『小腸募』」 「石門『三焦募』」 「気海」 「陰交」 「神闕(禁鍼)」※三角灸 「水分(禁鍼)」 「下脘」 「建里」 「中脘『胃募』『八会腑会』」 「上脘」 「巨闕『心募』」 「鳩尾『任絡』『膏之原』(禁鍼灸)」 「中庭」 「膻中『心包募』(禁鍼)」 「玉堂」 「紫宮」 「華蓋」 「璇璣」 「天突」 「廉泉/舌本」 「承漿」※金津・玉液※海泉・鬼封
『宗穴/八脈交会穴:列缺』
【概要】
・身前(六)陰脈の承任(担任・担保)と為す。元気精血を補益する。
・また「任=妊」。任脈が諸陰を受け持ち、妊娠の基本となる脈である事から(任主胞帯)。
・更に「任=衽(おくみ)」の意もあり、この脈が身前を通り、衣服の襟と接する事からとも。
【絡脈流注】「霊枢経脈第十」
「任脈の別絡を『尾翳』と云い、鳩尾を下り腹に散ず」
【症例/個人的見解】
・任脈は督脈と異なり、正経との交会が多い(特に体内で)。これは督脈(脊髄)が正中から末梢へと拡がる脈であるのに対し、任脈は末梢から正中に気血を集める脈であるからと考えられる。 全身の気血を集める脈が「子宮」、「口」、「眼」に通じるというのは、これらの部位が生殖と、意思の伝達に不可欠の部位であるからかもしれない。
・病態としては瘀血の症状が多く、任脈に属する穴は活血作用が強い。
・任脈は基本、元陰(特に生殖器疾患)に関わる病を主治する。
・任脈各穴の効能は、その交会する経絡との関わりが深い。
・任脈の経穴は、総じて仰向けの状態で頚を伸展(後屈)させて取る方が良い。