HT7)神門(shen2men2)(しんもん)・兌衝・中都・鋭中・鋭衝鋭骨
【取穴】
手関節前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋上。
※豆状骨の上縁橈側の陥凹部、手関節掌側横紋にある。
・筋肉《支配神経》:尺側手根屈筋腱 Flexor carpi ulnaris tendon《尺骨神経(C7,8) Ulnar nerve》
・知覚神経:尺骨神経掌枝 Palmar cutaneous branch of Ulnar nerve
・血管:尺骨動脈 Ulnar artery
※霊道、通里、陰郄、神門は一寸五分の中に密集する。
個人的には、この密集は屈筋支帯 Flexor retinaculum(横手根靭帯 Transverse carpal ligament)の幅に由来するのではと考える。
では、屈筋支帯に刺激をかけることで何が起きるのか?この点に関しては現段階では不明。
【名の由来】
「神=神志」「門=出入口」。心は神を蔵し、本穴が手少陰経の原穴である事から。
【要穴】
『心原穴』
『手少陰経兪土穴(火経土穴/火生土/自経子穴)』
『標本:手少陰之本』
【交会】
・経筋:手少陰経筋の結す処(鋭骨)
【作用】
〔補〕補益原気・心気補益・心神安寧・心血補養
〔瀉〕通調心絡・清心開竅・心火清熱
【弁証主治】
◆心/胆/腎病(実証)「実すれば其の子を瀉す」
精神症状(几帳面な性格、イライラして怒りやすい・躁鬱、統合失調症・被害妄想・高血圧、顔が赤い、脈浮洪・摂食障害など)
自律神経失調(睡眠障害、昼夜の逆転・梅核気・喉の渇き・掌の火照り・臍上の強い拍動、※伏梁・ひどい冷えなど)
皮膚疾患など
◆手少陰経(筋)病「体重節痛を治す」
しゃっくり・腋下痛・上肢前内側の冷え、痛み、静脈瘤・※肘網の痛み・第5指痛・インポテンツなど
【弁証配穴】
『兪原配穴(心):心兪+神門』…心虚証〔補法〕
『原絡配穴(心⇒小腸):神門+支正』…心所生病
『原募配穴(手少陰経):巨闕+神門』…手少陰経病
『二原配穴(心/胆):神門+丘墟』…心肝火旺証〔瀉法〕
『二原配穴(心/腎):神門+太渓』…心腎不交証
【主症配穴】
+尺澤…上肢の悪寒
【私見】
・原穴はその臓腑経絡に加え、子午の表裏にある臓腑経絡も主治する。すなわち心原穴である神門は、足少陽胆経の病(主に所生病)も主治とする。
・個人的には、原穴は『複合的臓腑連関』のつながりに基づいた、三臓腑を統合したような病状に用いるべきかと考える。
・本穴では「心/胆/腎」をつなぐ病状として、精神疾患、自律神経失調症、特に心身のバランスが崩れるような病状には、適応と考える。
・神門にて脈が触れる場合、妊娠の可能性あり。
・霊道、通里、陰郄、神門は一寸五分の中に密集する経穴なので、実際の臨床では効能を分けて論じるべきかは悩ましい。
・武術的な「致残十八穴」の一つ。打突により握力の低下を招く。
※心積伏梁…五積之一。慢性の臍~心窩部にしこりがあり、胸苦しさや動悸、イライラを生じさせるもの。加えて脈沈芤・お腹の熱感・顔が赤い・唾に血が混じる・掌のほてり。甚だしきは抽搐を伴う。
※肘網…肘に分布する細網(孫絡?)。脳梗塞後の肘のこわばりなどはコレによる。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
℡ 048-851-9675