BL22)三焦兪(san1jiao1shu4)(さんしょうゆ)
【取穴】
上背部、第1腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方一寸五分。
・筋肉:広背筋(胸腰筋膜)/脊柱起立筋
・運動神経:胸背神経/脊髄(腰)神経後枝
・知覚神経:脊髄(腰)神経後枝
・血管:腰動脈
※小野寺胆石疝痛圧診点(胆石疝痛の診断点)に近い。
【名の由来】
本穴が三焦絡の兪穴である事から。
【要穴】
『三焦兪穴』
【作用】
〔補〕健脾利湿
〔瀉〕調理三焦・利水道
【弁証主治】
◆三焦病(脾腎陽虚)
※副腎皮質機能異常・糖尿病・過敏性腸症候群・※積聚など
◆足太陽経病
風邪・発熱による疼痛(肩背や腰背の強いこわばりと痛み、悪寒)・自律神経失調症など
◆督脈病
躁鬱・注意欠陥多動性障害、統合失調症・頭が重く、ふらふらする・認知症など
※アルツハイマー型認知症は「脳の糖尿病」と考える説もある。
【弁証配穴】
『兪募配穴(三焦):石門+三焦兪…三焦病』
【私見】
・個人的には、背部兪穴と交感神経幹の関連を考えている。交感神経の状況に応じて、刺激の種類や強弱を変えるべきと考える。
・足太陽経の背部兪穴は、督脈の性質も帯びる。上記の交感神経幹との関連も含めて施術法を吟味すべし。
・三焦が気の生ずる所である事を考えると、全身の気機と水道の調整に効果が高いかと思われる。
・実際の解剖では、「幽門平面」が第1、2腰椎間に位置する。つまり十二指腸および膵臓がこの高さにある。このことから、糖尿病を含めた糖代謝異常に対しては、狙うべきポイントかと考える。
・Daniel Keown著『閃く経絡』では、十二指腸-膵臓-脾臓の機能的集合を、中医学的【脾】として提唱していた。非常に興味深い。
・本穴の外方一寸五分には『肓門』がある。肓は「腎より生じるもの」という意味があることから、三焦兪は腎病に対しても有効だと思う。
・心包と三焦という臓腑は、腎との関わりが非常に強いと考えることができるのでは? 特に三焦は元陽との関わりが深いので、腎兪同様の使い方ができると思う。
・個人的には、心包≒胸腺、三焦≒副腎(特に皮質)をはじめとした脂質組織ではないかと考えている。 ※副腎皮質ホルモンの亢進は、胸腺を萎縮させ、免疫を抑制する。この三者の働きは、当院が考える「ホメオスタシスの五角形」の要になるのではと考える。
※積聚…お腹の中にしこりがあり、張れや痛みを伴う病証。一般に、しこりが明らかで、痛みや張りが強く、位置が一定なものを積。 しこりが不明瞭で、一時的に張りがきて痛みが移動するものを聚という。
※副腎皮質ホルモン…ステロイドホルモン。いすれも生体のエネルギー利用を高める方向に左右する。ストレスに対して視床下部(CRH)⇒下垂体前葉(ACTH)⇒副腎皮質と、血中ホルモンの作用により促進され、血中のステロイド濃度が上位中枢に抑制的に働く。
・糖質コルチコイド…血糖値の上昇・タンパク質分解促進・抗炎症作用・免疫抑制作用・胃酸分泌促進など。クッシング症候群(過剰分泌)では、満月様顔貌・蛋白質質減少・高血糖・高血圧・精神異常などを生じる。
・電解質コルチコイド…血液量の減少やNa⁺濃度の低下に反応してNa⁺再吸収・水分再吸収・K⁺排出を促す。コン症候群(過剰分泌)では多尿・多飲・高血圧・虚弱などを生じる。
・副腎アンドロゲン…通常、活性は弱い。身体を男性化する。副腎性器症候群(過剰分泌)では、女性では体型の男性化・思春期の男性においては、精巣が未熟であるにも関わらず、第2次性徴のみが早熟する。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
℡ 048-851-9675
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