手 少陽 三焦 経(TE)

手少陽三焦経(Shou-shaoyang-sanjiao-jing)(Triple-Energizer-meridian)

【経脈流注】-霊枢経脈第十-

「三焦手少陽之脈、第4指の端より起り、上りて第5、4指の間の手甲、手首を循り、前腕の外、橈尺骨の間に出て上りて肘を貫き、上腕の外側を巡り、肩に上がって足少陽経と交わり、その後に出て缺盆に入り、膻中に布し、散じて心包に絡し、横隔膜を下り、循りて三焦に属す」

「其の支脈は膻中から上り缺盆に出て、項から耳後を上りて耳上角に出、そこから曲がって頬に下り眼窩下縁に至る」

「更に其の支脈は、耳後より耳中に入り耳前に出て、上関の前を過ぎ、頬にて本脈と交わり、外目眦に至る」

・左右計四十六穴

「関衝『井金』」 「液門『榮水』」 「中渚『兪木』」 ※「腰痛点精霊」 「陽池『原』」 「外関『絡』『八宗陽維』」 「支溝『経火』」 「会宗『郄』」  「三陽絡(禁鍼)」 「四瀆」 「天井『合土』」 「清冷淵」 「消濼」 「臑会」 「肩髎」 「天髎」 「天牖『手少陽入』(禁灸)」 「翳風(禁灸)」 ※「翳明」 「瘈脈(禁灸)」 「顱息(禁鍼)」 「角孫(禁鍼)」 「耳門」 「耳和髎」 「絲竹空(禁灸)」

『募穴:石門・(気海)・陰交』

※-鍼灸大成-によれば、「石門」だけでなく「陰交」も、三焦之募とある。

※両穴の中点にあり「気海」が『肓之原』であることを考えると、「気海」を中心としたこの三穴を合わせて『三焦募』とすべきかもしれない。

『背兪穴:三焦兪』

『下合穴:委陽』

『標本』-霊枢衛気第五十二-

(標)耳後上角の下の外目眦…鱗状縫合?「曲鬢(Pterion)浮白(Asterion)」?

(本)第5、4指間の上二寸…中渚と陽池の間、「精霊」付近?

 

【概要】

・二陽/枢:太陽と陽明をつなぐ枢軸の役割。半表半裏証を患いやすい。損なうと気病・骨病(バランス・運動機能障害)を生じる。

・気血:多気少血-素問血気形志篇第二十四-

・深度:二分以下(留一呼以下)-霊枢経水第十二-

・子午:亥刻(21:00~23:00)

※-素問運気七篇(第六十六~七十四)-に由来する時間と経絡の関係を臨床に応用したもの。此処では現在一般的な各経に対応する十二支(時刻)を表記。

 

【絡脈流注】-霊枢経脈第十-

「手少陽の別脈を『外関』と云い、手首の上二寸、腕の外側を巡り、胸中に注ぎ、心主に合す」

 

【経別(第五合)】-霊枢経別第十一-

『離(別):巓(頭頂部/百会?)』 『入:缺盆

※第五合は、経別の中でも少々特殊。

手太陽経別の記述が、手少陽経の記述と対になっている。

「手太阳之正、指地、别于肩解、入腋走心、系小肠也」

「手少阳之正、指天、别于巅、入缺盆、下走三焦、散于胸中也」

この対が何を意味するのかは、現時点では不明。

 

【根結】-霊枢根結第五-

『根:関衝』 『溜:陽池』 『注:支溝』 『入:天牖外関

 

【経筋(仲夏痺)】-霊枢経筋第十三-

「手少陽の筋、第四指の端に起り手首に結び、前腕の中央を巡り肘に結び、上腕の外側を巡り、肩に上り頚に行き、手太陽経筋と合す」

「其の分枝は、頬にて曲がり舌本系に入る」

「其の分枝は、上歯で曲がり耳前を巡り、外目眦に属し、頷に乗じて上り頭角に結ぶ」

・結処

『第4指端(関衝)』 『手首(陽池)』 『肘(天井)』 『頷』 『角(頭維)』

 

 

《三焦》「决渎之官、水道出为」-素問霊蘭秘典論篇第八-

・『決瀆之官』とは治水管理の役職。三焦が水の通路となり、その流れを管理する事から。

・水液運行の通路。

 

【相火之腑】心包と表裏を為し、生理上相互に影響し合う。

※個人的には、欲求と脂肪の関係では、と考える。

 

【諸気を主宰し、全身の気機と気化作用を統括する】

 

【三焦について:歴史的経緯】

・三焦に関する-内経--難経-の解釈は、生理としての認識にはあるも、”解剖”としての認識は明確にされていない。

-霊枢営衛生会第十八-

「上焦出于胃上口、并咽以上贯膈而布胸中、走腋、循太阴之分而行、还至阳明、上至舌、下足阳明、常与营俱行阳二十五度、行于阴亦二十五度一周也、故五十度而复大会于手太阴矣」

「中焦亦并胃中、出上焦之后、此所受气者、泌糟粕、蒸津液、化其精微、上注于肺脉、乃化而血、以奉生身、莫贵于此、故独得行于经隧、命曰营气」

「下焦者、别回肠、注于膀胱而渗入焉。故水谷者、常并居于胃中、成糟粕、而俱下于大肠、而成下焦、渗而俱下、济泌别汁、循下焦而渗入膀胱焉」

「焦如雰、中焦如沤、下焦如渎」

【上焦】霊枢の記述では経脈全体を指しているように思える。

【中焦】営気を生成する過程全体(脾・胃)を指しているように思える。

【下焦】糟粕の処理過程全体(小腸・大腸・膀胱) を指しているように思える。

-難経-

「三焦者、水谷之道路、气之所终始也。~故名曰三焦、其府在气街」-三十一難-

「所以腑有六者、谓三焦也」「有原气之别使、主持诸气、有名而无形。其经属手少阳、此外腑也」-三十八難-

「齐下肾间动气者、人之生命也、十二经之根本也、故名曰原」「三焦者、原气之别使也、主动行三气、经历于五脏六腑」「原者、三焦之尊号也、故所止辄为原」(臍下腎間の動気は人の生命、十二経の根本なり。故に名を原という。三焦とは原気の別使(脈)にして三気を通じ五臓六腑を営するを主す。原とは三焦の尊号なり)-六十六難-

 

その為、後世「三焦とは何か?」という問いに、多くの医家が各々の論を展開している。大別すれば以下の通り。

1)実体を持たない、機能(水道)のみの名称

「三焦は一名三関と言い、上中下合して一つとなり、名はあれど形なし。臓腑を主り、神道を往来し、全身を巡貫し、聞くはできるも見るは適わず。精気和利し水道決通し、腸胃の間に息気す」-千金要方-

「三焦は人の三元の気であり、五臓六腑・営衛経絡・内外左右上下の気を総領す」-中藏経-

「三焦は通じて一気となり、全身を保護外邪から身を護る。しかし之に形があると言えようか」-此事難知-

2)衝脈・任脈・督脈=命門の作用(腎陽・元陽)説

「手少陽三焦・右腎命門・心包はいずれも相火にて、その脈はいずれも腎(尺)脈で診る。腎は生気の門にして出でて臍下に治め、三岐して上衝し臍を挟んで天枢を過ぎ、上りて両乳の間膻中(元気の系る処)に至る。また足の三焦は太陽経の別絡にして、足太陽の正経に並び、入りて膀胱を絡し、下焦を約すなり。三焦は頭より心に至り、心から臍に至り、臍より足に至り、上中下の三焦を為す。その実態は真元の一気なり」

「三焦は即ち命門の作用にして、衝任督と相通ずるものなり」

「臍下腎間の動気は人の生命、十二経の根本なり。故に名を原という。三焦とは原気の別使(脈)にして三気を通じ五臓六腑を営するを主す。原とは三焦の尊号なり」

※本書ではこの論を基本として、三焦の位置を臍下丹田(胞宮)と仮定して作図している。

3)手少陽経そのもの説

「三焦とは、外には経脉があり内には無形である。もし経脉の起止や兪穴の主病がある事で三焦が有形の腑であると言うならば、衝任督脉等にも起止・主病があるという事に思い至らなければならない。衝脉を血海とし任脉は子宮を主るという事からも、また任脉には有形の腑があると見なければならなくなる」

4)脂膜・肓膜説

「三焦は掌程の大きさの脂膜である。膀胱と対称的なものであり、二本の白脈が中から出て一つは脊を挟んで上り、脳を貫く」-三因方-

「三焦は腔子を指しており、胸中の肓膜の上を上焦、肓膜の下から臍までを中焦、臍下を下焦とする。その体は、腔子の中の脂膜にあたり、五臓六腑の外側をすべて網羅している」

5)胸腔・腹腔説

「三焦とは隔膜脂膏の内側、五臓六腑の間隙であり、水穀が流化する関鍵である」-難経本旨-

「有名無形というなら、どこから水道が出るのか?何によって厚薄、緩急、直結の違いがあるのか?どこに縦横の肌理があるのか?また何を霧の様であり、泡の様であり、渎の様であるとするのか?気血の区別はどこでつけるのか?」「人体は皮毛から臓腑まで腹腔周囲上下の全体の形は大きな袋である。その内層は色形は真紅、その態は六合の様である。之が三焦でなくてなんだというのか?」-類経附翼-

6)上焦=胸管・中焦=膵臓・下焦=乳糜管説…三谷公器・澤田健など

7)リンパ組織説

8)そのほか、インド医学のトリド-シャ、つまりヴァータ(風)・ピッタ(火)・カパ(水)やチベット医学におけるニェパ(三体液)、つまりルン(風、生命の流れ…臍から下に位置し「動き/移行」を司る)、チィーパ(胆汁、生命エネルギー…鳩尾と臍のあいだに位置し「燃焼/転換」を司る)、ペーケン(粘液、生命のエネルギー力…鳩尾から上に位置し「結合/保存」を司る)などの概念が、中国医学に流入したものとする説もある。

 

【三焦について:個人的見解】

《手厥陰心包経》にて、心包と三焦と膏肓、胸腺と副腎と脂肪の関係についての私見を述べた。

三焦は加えて、『腠理』との関係も深い。

『腠理』とは、皮膚、肌肉、筋腱、臓腑の紋理や間隙などの総称とされるが、-金匱蔵府経絡先後病-によれば

「腠は之三焦、元真の通会せしむる処、血気の注ぐ処たり。理は之皮膚、臓腑の文理なり」

とある。

また、脈外をながれ温喣・防衛・滋潤を司る『衛気』は、「腠理を肥し、皮膚を充し、関合を司る」。

 

近年の解剖学的見地からみれば『腠理』と「Fascia(膜・筋膜)」の類似性は注目に値すると考える。

 

『衛気(体温調節・免疫力・水分代謝)』が『腠理(膜組織)』を充足させ、この『腠理』こそが『三焦(原気之別使)』であるとするなら、筋膜のみならず、骨膜(腎)、腹膜や胸膜(臓腑)、髄膜(脳)まで包括した「Fascia(膜・筋膜)」の概念は、三焦(水道・元陽)の理解の一つの方向かもしれない。