カテゴリー: 致命三十六穴
印堂(いんどう)
GV25)印堂(yin4tang2)(いんどう)・曲眉・光明・明堂・洞房・上丹田
【取穴】頭部、前正中線上、両眉頭の間。
【名の由来】「印=印鑑」「堂=広間…ここでは額(前頭骨)」。ヒンドゥ教徒が額につける印の場所である事から。
※中国以西との文化交流は紀元前からあり、この慣習も伝わっていたものと考えられる。
【交会】・経絡(3):督脈-(足厥陰経-陰蹻脈)
※一説には陰蹻脈の交会とも。
※肝経は「目系に連なり額に出て、督脈と巓にて会す」とある。
【要穴】『前三関』
※気功用語。小周天功における重要な関所の一つ。関元・中脘・膻中とする説と、関元・膻中・印堂とする説あり。
【弁証主治】
◆督脈病/陰蹻脈病「陽緩み陰急す」
躁鬱、不安障害・頭が重く、ふらふらする・羞明・視力低下、眼裏痛〔『洞房』~『明堂』~『印堂』の透刺〕
注意欠陥多動性障害、統合失調症・意識障害、小児のひきつけ・健忘・自律神経失調、睡眠障害・肩背部痛・※昌陽脈腰痛・四肢の冷え・皮膚の強いしびれやこわばり・部位がはっきりしない疼痛・錐体外路系障害など
◆足厥陰経病
腰背部痛・性欲の異常・泌尿器、婦人科疾患〔灸〕・更年期障害など
【配穴】+風池…めまい
【症例/個人的見解】
・個人的には、Nasion(鼻根点:前頭鼻骨縫合が正中矢状面に切られる点)を印堂とすべきかと思う。
・インド医学にも「マルマ(marman)」と呼ばれるツボに該当する概念がある。本穴はインド医学的には「sthapani(眉間/靭帯のマルマ)」と呼ばれ、意識障害や精神安定に治効があるとされる。本穴にセサミオイルを流し落とす技法は有名。
・道家(仙道家)などでは、印堂の上一寸を「明堂(太微西南の星の名)」、二寸を「洞房」、三寸を「上丹田」と称す。-抱朴子内篇巻之十八 地眞―
・個人的には鬱など、気力や集中力が低下している患者に対し、『洞房』~『明堂』~『印堂』の透刺を行うことが多い。
・「陽緩み陰急す」を姿勢からみると、前傾前屈姿勢となる。この姿勢に加え、「蹻=足を高くあげて歩く・力強く歩く様・敏捷」を病むと考えた時、パーキンソン病をはじめとするような錐体外路系の変性疾患に対して、陰蹻脈は適応かと考える。
・武術的な「致命三十六穴」の一つ。脳、眼の損傷。
※昌陽之脈腰痛…腰痛が脇肋までひきつれ、視界がぼやけ、甚だしい時には背中が反り返り、舌が巻き上がって話せない。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
☎ 048-851-9675
保護中: 神庭(しんてい)
瘂門(あもん)
GV15)瘂門(ya1men2)(あもん)・舌横・舌厭
【取穴】後頚部、後正中線上、第2頚椎棘突起上方の陥凹部。
※GV16)風府の下方五分にある。
【名の由来】「瘂=しゃべれない」「門=出入口」。古来、本穴に灸をしたところ瘂となり、鍼にて治ったという逸話がある事から。
【交会】・経絡(2):督脈-陽維脈
【作用】
〔補〕益脳増音
〔瀉〕『気海(胸街)之兪/通督解痙・醒脳開竅』
【弁証主治】
◆督脈病
てんかん、意識障害・躁鬱、不安障害・注意欠陥多動性障害、統合失調症・頭が重く、ふらふらする・肩背部痛・腰背部の痛みなど
◆陽維脈病「寒熱に苦しむ」
悪寒戦慄をともなう高熱・往来寒熱・髄膜炎症状・リンパ節腫・四肢の冷え・胸苦しさなど
【主症主治】失語症
【配穴】
『回陽九針穴法:瘂門⇒労宮⇒三陰交⇒湧泉⇒太渓⇒中脘⇒環跳⇒足三里⇒合谷/蘇生法?』
+関衝…失語症(聾唖)
【症例/個人的見解】
・一寸五分以上は刺入しないように(瘂門-耳孔-眼を結ぶ角度で刺入しない事)。
・甲乙経・和漢三才図会には「禁灸穴」とある。また武術的な「致命三十六穴」の一つ。頚椎損傷。要注意。
・陽(維・蹻)を病むと寒を生ず。
・中国では、『回陽九針穴』を順番に取穴していくと、一時的な蘇生効果があるともいわれる。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
☎ 048-851-9675
命門(めいもん)
GV4)命門(ming4men2)(めいもん)・十四椎(shi2si41zhui1)(じゅうしつい/じゅうよんつい)・属累・竹杖
【取穴】腰部、後正中線上、第2腰椎棘突起下方の陥凹部。
【由来】本穴が両腎(先天之本)の間にある事から。
【交会】
・経絡(2):督脈-帯脈の交会穴とも。
・経別:第一合(足少陰の出る処。此処から帯脈に属す)
【作用】
〔補〕『水兪五十七処“腎兪”/補腎・温陽補虚』
〔瀉〕督脈通暢・去邪散滞
【弁証主治】
◆督脈病
躁鬱・注意欠陥多動性障害、統合失調症・頭が重く、ふらふらする・常に眠く身体が重い・肩背部痛・腰背部の痛み、悪寒・膝、四肢の冷え・サルコペニア(加齢による筋力低下)など
◆膀胱-腎病
成長発育不全、代謝不全・脱毛・視力の低下・耳鳴、難聴・歯槽膿漏・自律神経失調、更年期障害・顔色が黒い・泌尿器、婦人科疾患〔金鍼〕・下痢〔灸100壮〕・脈沈遅など
◆帯脈病「腹満、腰溶溶として水中に坐している如し」
腹張・腰~側腹部痛、痙攣・下脱症状・過敏性腸症候群〔灸100壮〕など
【配穴】
+関元+足三里…虚弱体質
+肝兪…立ちくらみ
+長強〔瀉〕…細菌性の下痢〔命門は補〕
【症例/個人的見解】
・『水兪五十七処』の“腎兪”に数えられる。津液代謝の異常に関しては効果が高い。
・個人的には、帯脈は、本穴から任脈の体幹すべての穴へと向かうイメージをもっている。こう考えると帯脈は、腹横筋や最内肋間筋など、深奥の筋の役割なども持つのではないか?
・夜盲症には、ビタミンAの摂取と吸収率の改善を。
・武術的な「致命三十六穴」の一つ。腎の損傷。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
☎ 048-851-9675
廉泉(れんせん)/舌本(ぜつほん)
CV23)廉泉(lian2quan2)(れんせん)・舌本(she2ben3)(ぜっぽん)・ 本池
【取穴】前頚部、前正中線上、喉頭隆起上方、舌骨の上方陥凹部。
※頚部を軽く屈曲すると、下顎骨と甲状軟骨の間に舌骨隆起を触れる。
【名の由来】「廉=辺り」。本穴内部に舌根があり、此所が津液が泉の様に溢れ出る場所である事から。
【要穴】
『標本:足太陰之標』
『根結:足少陰之結』
【交会】
・経絡(2):任脈-陰維脈
・経筋:足太陽経筋-手少陽経筋の結す処(舌本)
【作用】
〔補〕補益舌本・生津潤燥
〔瀉〕舌絡通調・壅腫消散・清熱化痰・通利咽膈
【弁証主治】
◆任脈病
泌尿器、婦人科疾患・腹部のしこり・痔・糖尿病など
◆陰維脈病「心痛に苦しむ」
心痛、心窩部痛・激しい動悸、胸苦しさ〔繆刺法…反対側を瀉血〕・梅核気〔刺鍼1分・灸3壮〕・しゃっくり・脇下のつかえ・腰背部痛など
◆足太陰経病
貧血、血液疾患・胃腸虚弱・婦人科疾患・萎縮性舌炎、舌のこわばり・嚥下困難・脈浮緩など
◆足少陰経筋病
てんかん発作・下肢~足底のひきつれ・錐体外路系障害など
◆足太陽経筋病
項頚部痛・鎖骨窩痛・脇痛・こむら返り・踵痛・足第5指痛・身体を揺すれないなど
◆手少陽経筋病
上肢痛、ひきつれなど
【主症主治】流行性耳下腺炎・扁桃腺炎・咽頭炎
【主症配穴】
+中衝…舌下の炎症・舌瘡
【症例/個人的見解】
・足陰経における根結では、『結』は任脈上の中脘(足太陰)、玉堂(足厥陰)、廉泉(足少陰)とされている。足陽経同様、経筋と絡めて考えると、この3点は、各経筋の動作上の軸と関わるのではないだろうか?
・足少陰経筋の病-仲秋痺-は「此筋折紐、紐発数甚者、死不治」とある。個人的には錐体外路系の変性疾患を思わせる。
・梅核気の治療で著効があったことがある。
・武術的な「致命三十六穴」の一つ。気道の損傷。