カテゴリー: 妊婦禁鍼
中極(ちゅうきょく)
CV3)中極(zhong1ji2)(ちゅうきょく)・気原(qi4yuan2)(きげん)・玉泉・膀胱募・気魚
【取穴】下腹部、前正中線上、臍中央の下方四寸。
【名の由来】「極=端」。本穴が正中線上の下端にある事から。星の名に由来するとも。
【要穴】『膀胱募穴』
【交会】・経絡(4):任脈-足三陰経
【作用】
〔補〕化気行水・膀胱約束・温補腎陽・補腎培元
〔瀉〕尿竅開通・小便通利・清瀉膀胱湿熱・通経活血・温経散結・活血去瘀
【弁証主治】
◆膀胱病
泌尿器疾患・痔・顔色が黒いなど
◆肺虚証
呼吸器の虚弱・咳嗽、喘息・自律神経失調など
◆任脈病
婦人科疾患・下腹部のしこり・糖尿病など
◆足太陰経病
※尸厥・貧血、血液疾患・嚥下困難・心窩部痛・胃腸虚弱、萎縮性胃炎・出血傾向など
◆足少陰経病
痴呆・視力の低下・耳鳴、難聴など
◆足厥陰経病
腰痛・性欲の異常・更年期障害など
【弁証配穴】
『兪募配穴(膀胱):中極+膀胱兪』…膀胱病
『募合配穴(膀胱):中極+委中』…膀胱湿熱証
『原募配穴(足太陽経):中極+京骨』…足太陽経病
【主症配穴】
+委中…腰痛
+照海…陰部の痒み〔瀉法〕
+太渓…頻尿
+曲泉…排尿痛
+商丘…不妊
+外陵… 男性不妊〔瀉法〕
+肩井…胎盤がでない〔瀉法〕
【症例/個人的見解】
・募穴はその臓腑に加え、子午の表裏にある臓腑も主治する。すなわち膀胱募穴である中極は、肺の病も主治とする。
・古典には「妊婦禁鍼」とある。要注意。
・武術的な「致命三十六穴」の一つ。骨盤腔内臓器の損傷。
・チベット医学では性欲の過剰亢進や異常性癖など(性の精神異常)に本穴を用いるらしい。灸法。
※尸厥…突発性の昏倒。手足の冷え・鳥肌・顔色が青黒い・うわごと・咬い締め・めまい・呼吸微弱、脈絶微弱など。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
☎ 048-851-9675
肩井(けんせい)
GB21)肩井(jian1jing3)(けんせい)・膊井
【取穴】後頚部、第7頚椎棘突起と肩峰外縁を結ぶ線上の中点。
【名の由来】「井=陥凹」。本穴の位置から。
【交会】・経絡(4):手足少陽経-足陽明経-陽維脈
※-鍼灸甲乙経-には「手少陽、陽維之会」、-鍼灸大成・聚英-には「手足少陽、足陽明、陽維之会。連入五臓」とある。
【作用】〔補多瀉少〕通経活絡・割痰開竅
【弁証主治】
◆少陽経病
多汗・偏頭痛・耳鳴、難聴・聾唖・口苦・溜息・肩、肩胛骨痛・上肢痛、マヒ、火照り・脇肋痛・足首痛・皮膚の乾燥・※副腎皮質機能亢進症状など
◆足陽明経病
躁鬱、不安障害・注意欠陥多動性障害、統合失調症など
◆陽維脈病「寒熱に苦しむ」
悪寒戦慄をともなう高熱・往来寒熱・リンパ節腫・てんかん、意識障害・産後の手足の冷え・めまい・胸苦しさ・腰痛など
【主症配穴】
『中風七穴:百会+風池(曲鬢)+肩井+大椎(風市)+足三里+間使(懸鐘)+曲池/半身不随』
+中極…胎盤がうまくでない〔瀉法〕
【症例】
・深刺は危険。もし深刺により悶倒した際は急ぎ「足三里」を補すること。
・-玉竜歌-に、「肩井は真気の集まる処なので、補多瀉少が良い」とある。要注意。
・妊娠初期は禁忌。
・陽(維・蹻)を病むと寒を生ず。
※副腎皮質ホルモン…ステロイドホルモン。いすれも生体のエネルギー利用を高める方向に左右する。ストレスに対して視床下部(CRH)⇒下垂体前葉(ACTH)⇒副腎皮質と、血中ホルモンの作用により促進され、血中のステロイド濃度が上位中枢に抑制的に働く。
・糖質コルチコイド…血糖値の上昇・タンパク質分解促進・抗炎症作用・免疫抑制作用・胃酸分泌促進など。クッシング症候群(過剰分泌)では、満月様顔貌・蛋白質質減少・高血糖・高血圧・精神異常などを生じる。
・電解質コルチコイド…血液量の減少やNa⁺濃度の低下に反応してNa⁺再吸収・水分再吸収・K⁺排出を促す。コン症候群(過剰分泌)では多尿・多飲・高血圧・虚弱などを生じる。
・副腎アンドロゲン…通常、活性は弱い。身体を男性化する。副腎性器症候群(過剰分泌)では、女性では体型の男性化・思春期の男性においては、精巣が未熟であるにも関わらず、第2次性徴のみが早熟する。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
☎ 048-851-9675
昆侖(こんろん)
BL60)昆侖(kun1lun2)(こんろん)・崑崙・下崑崙・厥陽
【取穴】足関節後外側、外果尖とアキレス腱の間の陥凹部。
【名の由来】神山の名。本穴が頭部の諸疾患(特に水病)を主治する事から。
【要穴】
『足太陽経経火穴(水経火穴/水克火)』
『根結:足太陽之注』
【交会】・経筋:足太陽経筋の結す処(踵外、外踝)
【作用】〔瀉〕鬱熱清降・泄血去瘀・寒湿温散・通絡散滞・清利頭目・舒筋活絡
【弁証主治】
◆傷寒太陽病「喘咳寒熱を治す/水克火」
急性の悪寒発熱、咳嗽・小児のひきつけ〔灸〕など
◆足太陽経(筋)病
発熱による疼痛・項頚部痛・鎖骨窩痛・脇痛・腰背部痛・こむら返り・踵痛・足第5指痛〔瀉血+局所灸〕・身体を揺すれないなど
【主症主治:『馬丹陽天星十二穴/急性の喘息発作、強い胸苦しさ・腰、臀部のひきつれ〔鍼7分+灸5壮〕』】
【配穴】
+犢鼻…風邪
+湧泉…身体の奥の鈍痛
+承山…眼痛・こむらがえり
+中封…急性腰痛〔瀉法〕
+養老…腰椎椎間板ヘルニア〔慢性化したものには+伏兎〕
+委中…手足の重怠さ
+太渓…慢性の膝痛・踵痛〔補法〕
【症例/個人的見解】
・古典には、「妊婦刺之落胎」とある。要注意。
・本穴が足太陽経の経穴であること、また馬丹陽天星十二穴にも喘息の記述があることなどから、呼吸器疾患にはぜひ試したい。
・武術的な「致残十八穴」の一つ。捻挫、打突により足に力が入らなくなる。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
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缺盆(けつぼん)
ST12)缺盆(que1pen2)(けつぼん) ・天蓋・尺蓋
【取穴】前頚部、大鎖骨上窩、前正中線の外方四寸、鎖骨上方の陥凹部。
※シュミット点(肺結核等の診断点)に近い。
【名の由来】「缺=欠けた」。鎖骨上窩の形状が、欠けた盆を思わせる事から。
【交会】※古典には缺盆を交会とする記述は無い。しかし霊枢経脈第十に拠れば、膀胱経以外の陽経は、皆、缺盆より体内に入る。
・経絡(7):手足陽明経-手足少陽経-手太陽経-衝脈-陰蹻脈…「(五臓)六腑之道」
・経筋(3):手太陰・足陽明・足少陽経筋の結する処
・経別(2):第五合(手少陽の入る処)・第六合(手太陰・手陽明の出る処)
【作用】
〔補〕温補肌肉(補陽)
〔通〕通経緩脈
〔瀉〕『治熱病五十九兪/清熱胸中・理気化痰』
【弁証主治】
◆肺-大腸病
躁鬱、不安障害・アレルギー疾患・自律神経失調・呼吸器の虚弱・排便異常・脈浮・臍右の強い拍動など
◆三焦病/少陽経病
多汗・耳鳴、難聴・口苦・喉痛・溜息・上肢痛、マヒ・脇肋痛・皮膚の乾燥など
◆陽明経病
注意欠陥多動性障害、統合失調症・歯痛・頚部の腫脹など
◆手太陽経病
下顎痛・項頚部痛・肩痛、火照りなど
◆衝脈/足陽明経筋/足少陽経筋病「逆気して裏急す」
身体が膨張したように感じる〔瀉〕
身体が縮んだように感じる〔補〕
痴呆・更年期障害・泌尿器、婦人科疾患・皮膚静脈炎・半身不随・顔面神経マヒ・斜頚、チック・腹筋の緊張・股関節痛・下肢痛、こわばり、マヒ・こむら返り・筋力低下など
◆陰蹻脈病「陽緩み陰急す」
てんかん・眼裏痛・視力低下・腰痛・下半身の冷えと痛み・皮膚の強いしびれやこわばり・部位がはっきりしない疼痛・錐体外路障害など
◆手太陰経筋病
吐血・母指痛など
【主症配穴】
+期門…胸脇痛〔瀉法〕
+肺兪…肺結核〔按摩も良し〕
【症例/個人的見解】
・経絡的には気衝と並ぶ要衝であるが、和漢三才図会に「妊婦禁鍼」とある。要注意。
・実際に臨床上では、刺鍼は危険。灸法や推拿での施術が妥当かと。
・陰蹻脈は「一身左右の陰を主る」ことから、臨床では巨刺・繆刺を多用する。
・「陽緩み陰急す」を姿勢からみると、前傾前屈姿勢となる。この姿勢に加え、「蹻=足を高くあげて歩く・力強く歩く様・敏捷」を病むと考えた時、パーキンソン病をはじめとするような錐体外路系の変性疾患に対して、陰蹻脈は適応かと考える。
・陰蹻脈の病証では、表に異常がなく裏が病み(表面上に異常がないが症状が強いなど)、夜に症状がでる事が多い。
・陰を病むと熱を生ず。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
☎ 048-851-9675
【おまけ】