
GV20)百会(bai3hui4)(ひゃくえ)・泥丸・鬼門・三陽五会・嶺上・天満
【取穴】
頭部、前正中線上、前髪際の後方五寸。
※前髪際と後髪際を結ぶ線上の中点の前方一寸にある陥凹部。
※耳を折り返したとき、両耳尖を結ぶ線の中点にある。
※個人的には本穴は「前正中線上、矢状縫合の中点」に取穴すべきと考える。


【名の由来】
本穴にて五経が交わる事から。
【交会】
・経絡(8):督脈-(手)足太陽経-手足少陽経-足厥陰経-(手足陽明経-陰蹻脈)
※一説には六陽経全ての交会とも。
※一説には陰蹻脈の交会とも。
・経別:第五合(手少陽の別れる処)
【作用】
〔補〕 『髄海(頭街)之兪/補髄益脳・昇陽益気・回陽固脱』
〔瀉〕 『治熱病五十九兪/清脳開竅・熄風潜陽・去風散寒・通督解痙・鼻竅温通』
【弁証主治/百病を皆治す】
◆督脈病/頭街の病/陰蹻脈病「陽緩み陰急す」
※脱証・半身不随〔透曲鬢〕・発作性の痙攣、ひきつけ・躁鬱、不安障害〔灸〕・注意欠陥多動性障害、統合失調症・健忘・自律神経失調 、嗜眠・頭痛・頭が重く、ふらふらする・視力低下、眼裏痛・肩背部痛・腰背部痛・※昌陽脈腰痛・四肢の痛み、マヒ、冷え、こわばり・皮膚の強いしびれやこわばり・部位がはっきりしない疼痛・錐体外路系障害など
◆陽病
悪寒戦慄・悪風発熱・黄疸・多汗・出血傾向・発熱による疼痛・歯痛・口苦、口渇・顔色が黒い・皮膚の乾燥)・蕁麻疹、発疹〔瀉血〕など
◆足厥陰経病
※積聚・性欲の異常・※疝痛・泌尿器、婦人科疾患〔灸〕・更年期障害など

◆三焦病
耳鳴、難聴・喉痛・※副腎皮質機能亢進症状など
【主症主治】
鼻づまり・鼻水が止まらない〔灸〕
【主症配穴】
『中風七穴:百会+風池(曲鬢)+肩井+大椎(風市)+足三里+間使(懸鐘)+曲池/半身不随』
『三才穴:百会+湧泉+水溝/意識障害・昏睡』
⇒膻中⇒玉堂…注意欠陥多動性障害、統合失調症など(熱い精神疾患)〔灸:チベット医学の技法。百会⇒膻中⇒玉堂の順に施灸していく。順番が大切らしい〕
+隠白…意識障害・昏睡〔瀉法〕
+絲竹空…涎をたらす
+風池〔灸法〕…発作性の痙攣・ひきつけ
+太衝…四肢の痙攣
+神庭…発熱
+顖会…嗜眠〔瀉法〕
+水溝…不安障害
+少商〔瀉血〕…鼻血〔百会は灸〕
+鳩尾…小児の脱肛〔先ず百会に灸、後に鳩尾〕
+帯脈…おりものに血や膿が混じる・子宮脱垂〔灸法〕
【症例検証/個人的見解】
・個人的には頭部の穴は頭蓋縫合に沿ってに取穴すべきと考える。

・陰蹻脈は「泥丸(百会)に通ず」とされる。一方「天門(顖会)を開く」ともされ、どちらを頭部の基準点とすべきかは、悩ましいところ。
・週一で本穴に透熱灸を据えている患者さんの話では、髪が黒くなってきたとのこと。
・第5合は、他の経別と比べ特殊な走行をとる。霊枢経別第十一での手少陽経別の記述は、手太陽経の記述と対になっている。この対が何を意味するのかは、現時点では不明。
・「陽緩み陰急す」を姿勢からみると、前傾前屈姿勢となる。この姿勢に加え、「蹻=足を高くあげて歩く・力強く歩く様・敏捷」を病むと考えた時、パーキンソン病をはじめとするような錐体外路系の変性疾患に対して、陰蹻脈は適応かと考える。

・戦国時代の武将、松永弾正久秀は自害の間際、「切腹中に中風がおこり、五体がままならなくなること」を畏れ、百会に灸を据えさせたと云う。当時から脳卒中の予防穴として有名だった様子。
・アーユルヴェーダでは5つの頭蓋縫合線自体を「simanta(毛髪の分け目/関節のマルマ)」と捉えている。パニック症候群など過剰な感情の起伏に効があるとされる。
・-美容と健康の鍼灸(張仁編著・浅野周訳/三和書籍)-によれば、「血圧に対してはっきりした双方向調節作用がある」とある。
※脱証…珠ような汗がながれ、手足がひどく冷える・眼は閉じ口は開いたまま、手は巻き上がる・尿漏れ・脈微細絶。虚証。描写から考えるに、錐体路、錐体外路変性、進行性球マヒなども含まれるかと。
※昌陽之脈腰痛…腰痛が脇肋までひきつれ、視界がぼやけ、甚だしい時には背中が反り返り、舌が巻き上がって話せない。
※積聚…お腹の中にしこりがあり、張れや痛みを伴う病証。一般に、しこりが明らかで、痛みや張りが強く、位置が一定なものを積。しこりが不明瞭で、一時的に張りがきて痛みが移動するものを聚という。
※疝気・疝…元来は腹痛を指したが、現在は色々な意味をもたせている。体腔内容物が外に突出する事の総称。ヘルニア。生殖器・睾丸・陰嚢部の病証。腹部激痛に二便不通が伴う病証。腸閉塞・腹膜炎の類etc。
※副腎皮質ホルモン…ステロイドホルモン。いすれも生体のエネルギー利用を高める方向に作用する。ストレスに対して視床下部(CRH)⇒下垂体前葉(ACTH)⇒副腎皮質と、血中ホルモンの作用により促進され、血中のステロイド濃度が上位中枢に抑制的に働く。
・糖質コルチコイド…血糖値の上昇・タンパク質分解促進・抗炎症作用・免疫抑制作用・胃酸分泌促進など。クッシング症候群(過剰分泌)では、満月様顔貌・蛋白質質減少・高血糖・高血圧・精神異常などを生じる。
・電解質コルチコイド…血液量の減少やNa⁺濃度の低下に反応してNa⁺再吸収・水分再吸収・K⁺排出を促す。コン症候群(過剰分泌)では多尿・多飲・高血圧・虚弱などを生じる。
・副腎アンドロゲン…通常、活性は弱い。身体を男性化する。副腎性器症候群(過剰分泌)では、女性では体型の男性化・思春期の男性においては、精巣が未熟であるにも関わらず、第2次性徴のみが早熟する。
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※四神聰(si4shen2cong1)(ししんそう)・神聰
※経外奇穴-太平聖恵方-
【取穴】
頭頂部。百会の前後左右一寸。計4穴。
【名の由来】
「神=神志」「聰=聡明」。本穴が百会の前後左右に位置し、神明を啓かにし、頭脳を明晰にする効を持つ事から。
【作用】
〔瀉〕理気降逆・醒神開竅
【弁証主治】
肝火証〔瀉血〕
【主症主治】
頭痛・眼痛・半身不随・てんかん・パーキンソン病・精神疾患・健忘・小児の多動性症候群・不眠・めまい・円形脱毛症
【配穴】
+太衝…頭痛〔四神聡は瀉血〕
【症例/個人的見解】
・百会と併せて用いる事が多い。
・円形脱毛症の患者に対し、頭皮の感触の違和感から四神聰様に前後左右4穴を選定し、百会に向けての横刺をして効果を得ることがあった。その時は百会の前後左右二寸強であった。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
埼玉県さいたま市中央区上落合2-5-35-1F
048-851-9675