BL17)膈兪(ge2shu4)(かくゆ)・血会膈兪
【取穴】
上背部、第7胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方一寸五分。
※肩甲骨下角は第7胸椎棘突起と同じ高さにある。
※左側は胃・肝・胆疾患の圧診点に近い。
・筋肉:僧帽筋/広背筋/脊柱起立筋
・運動神経:副神経《Ⅺ》、頚神経後枝(僧帽筋)・胸背神経(広背筋)・胸神経後枝(脊柱起立筋)
・知覚神経:胸神経後枝
・血管:肋間動脈
【名の由来】
本穴が横隔膜に通じ、兪穴を成す事から。
【要穴】
『八会穴:血会』
【作用】
〔補〕陰血補養・摂血止血
〔瀉〕去瘀通絡・去瘀生新・寛膈理気・調血活血
【弁証主治】
◆血病(心/肝病)〔補瀉をよく考えて〕
貧血、血液疾患・循環器症状(脈浮洪)・胃下垂、萎縮性胃炎、※積聚、※痃癖〔灸100壮〕・掌の火照り・肝疾患・夕方~夜間に症状が悪化など
◆足太陽経病
風邪・発熱による疼痛など
◆督脈病
うつ病・頭が重く、ふらふらする・嗜眠・※周痺・肩背部痛・腰背部の痛み、悪寒・膝、四肢の冷えなど
【主症主治】
逆流性食道炎・ゲップ・しゃっくり・急性乳腺炎・母乳が出にくい・肋膜炎
【弁証配穴】
『郄会配穴(血):隔兪+梁丘・地機』…血病
『崔氏四花(六花)灸法:膈兪+胆兪(+膏肓)』…虚証〔灸法〕
【主症配穴】
『胃の六つ灸:膈兪+肝兪+脾兪/胃疾患(慢性の逆流性食道炎)』〔灸法〕
『騎竹馬灸法:膈兪+肝兪/背部の皮膚病・リンパ節腫』〔灸法〕
+至陽…咳嗽・※結積留飲〔灸法〕
+内関…肋間筋痙攣・胸苦しさ
+率谷…胃のひきつれ〔瀉法〕〔灸を年齢の数だけ〕
【私見】
・個人的には、背部兪穴と交感神経幹の関連を考えている。交感神経の状況に応じて、刺激の種類・程度を変えるべきと考える。
・足太陽経の背部兪穴は、督脈の性質も帯びる。上記の交感神経幹との関連も含めて、施術方法を熟考すること。
・膈兪は、心兪(主血脈)と肝兪(主蔵血)の中央に位置するため、『血会』とされる。
・『胃の六つ灸』は、老齢の慢性の逆流性食道炎(食後のむかつき)には、効果が高いように思える。
※周痺…痺証の一種。全身の鈍痛、マヒ・項背のこわばり・脈濡渋。パーキンソン病に近いか?
※積聚…お腹の中にしこりがあり、張痛を伴う病証。一般に、しこりが明らかで、痛みや張りが強く、位置が一定なものを積。しこりが不明瞭で、一時的に張りがきて痛みが移動するものを聚という。
※痃癖…脇肋部にある癖塊。積聚に似る。痃:臍の両側が筋張り盛り上がっているもの。痛みは無い事もある。癖:両脇にあり、痛む時だけ触知できるもの。
※結積溜飲…水飲で生じた積。積塊が明らかにあり、張痛が強く、固定して移動しないもの。
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※胃脘下兪(wei4wan3xia4shu4)(いかんげゆ)・胰兪/膵兪(yi2shu4/cui4shu4)(すいゆ)
※経外奇穴…唐代-備急千金要方-
【取穴】
上背部、後正中線上、第8胸椎棘突起下方の陥凹部、およびその外方一寸五分。計3穴。
・筋肉:僧帽筋/広背筋/脊柱起立筋
・運動神経:副神経《Ⅺ》、頚神経後枝(僧帽筋)・胸背神経(広背筋)・胸神経後枝(脊柱起立筋)
・知覚神経:胸神経後枝
・血管:肋間動脈
【名の由来】
「胃脘=上腹部」。本穴が、腹部の痛みに効果がある事から。また本穴が、膵臓疾患に効果がある事から。
【主治】
糖尿病・胃痛・膵炎・胸肋痛・嘔吐・咳嗽・喉の乾燥
【私見】
・督脈上も含め、計3穴であることから、督脈に同上に記載する。
・膵臓は解剖学的には、第1、2腰椎の前面に位置する。
・Daniel Keown氏著『閃く経絡』の中では、中医学的《脾》を、十二指腸-膵臓-脾臓の総合的作用として捉えている。とても興味深い。
編:はりきゅう治療院 伍行庵
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